【東京女子大学教授】若い世代に経済や金融を学ぶ醍醐味を伝えるために、銀行員から研究者へ転身

東京女子大学現代教養学部国際社会学科にて特任教授を務めている、長谷川克之先生にお話を伺いました。

長谷川克之先生は銀行員として34年の経験を持ち、現在は国際経済や国際金融に関する幅広い研究をされています。

なぜ、銀行員から研究者を目指されたのですか?若手が証券業界で活躍するために必要なことは何ですか?
国際経済や国際金融を学ぶ意義や証券業界における若手のキャリア形成について、長谷川先生独自の視点からお話しいただきました。

東京女子大学
現代教養学部
国際社会学科 経済学専攻
長谷川 克之先生

1988年に日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。調査部、出向先のみずほ総合研究所で通算25年間、マクロ経済や金融に関わる調査・研究に携わる。みずほ総合研究所では、チーフエコノミストとしてエコノミスト集団を率いて、グループ内外への情報発信も担っていた。銀行員として34年間働いた後、研究者へ転身。現在は、東京女子大学現代教養学部国際社会学科にて特任教授を務めている。

34年間の銀行員生活を経て、研究者の道へ

東京女子大学本館

研究者を目指したのには、2つの理由があります。

私は大学の研究者としては少し異色のキャリアを歩んでおり、34年間銀行員を務めた後に研究者になりました。銀行員としてのキャリアが長くなる中で、より独立した立場から調査・研究活動を続けたいと考えたのが、1つ目の理由です。

2つ目は、若い人に自分の経験を踏まえて激動する経済や金融を学ぶことの醍醐味を伝え、少しでも関心を持ってもらいたいと思ったからです。

海外の動向によって物事が大きく左右される現状において、海外の経済・金融市場を踏まえた議論が必要だと感じた

私は国際経済や国際金融に関する、幅広いテーマを研究しています。現在、国際経済・金融は、さまざまな構造変化に直面しています。例えば、中国や新興国経済の存在感が高まる中、ウクライナ戦争を契機に進む金融の分断化、気候変動問題への対応、そして急速なデジタル化などが挙げられます。こうした構造変化が国際経済・金融に与える影響について、私は研究しています。

日本の経済規模は、世界の中で5%弱のウェイトしかないのが現実です。経済や金融市場、企業経営、政策のすべてが、海外の動向によって大きく左右されます。そのため、海外の経済や金融市場を踏まえた議論が不可欠だと考え、この研究を行うことにしました。

キャリアの中でも特に印象深い、2つのプロジェクト

St Paul

銀行員の頃は、海外出張へ行く機会が数多くありました。2013〜2016年頃に中東を集中的に重ねて訪問し、オイルマネーを運用する政府系ファンドに対して日本の経済・金融市場についてレクチャーするプロジェクトに参加しました。サウジアラビア、クウェート、UAE、カタール、オマーンなど各国での議論を通じて、海外投資家の立場から日本の可能性と課題を見つめ直す良い機会となりました。このプロジェクトへの参加は、私にとって非常に印象に残る経験となっています。

これまでのキャリアの中で最も誇りに思う成果は、2014年にみずほ総合研究所、大和総研、日本経済研究センターの3シンクタンクが共同で行った、東京の国際金融都市構想に関する政策提言プロジェクトに従事したことです。当時は、東京市場で国際金融センターが死語になりつつありました。そんな中、我々の提言は東京都知事、財務大臣にも届けられ、結果として安倍政権の政策として採用されました。東京国際金融機構という推進母体設立のベースとなるプロジェクトで、他のシンクタンク研究員からも多くの学びを得ることができました。

証券業界で成功するためには、専門知識に加えて対人理解力が必要

英ロイヤル・エクスチェンジ

証券・金融のプロフェッショナルには、専門的な知識や知見を磨くことが求められます。そのため、10〜30代の若い世代の方々が証券業界で成功するためには、証券アナリストの資格取得が大いに役立ちます。まずは、日本での資格取得を目指し、次にグローバルパスポートである米国のアナリスト資格にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。また、個人や法人、投資家を問わず、お客様に寄り添いパートナーとなれる対人理解力は、専門知識以上に重要な能力となります。

証券・金融業は、お客様のニーズや課題を金融面から解決するお手伝いをする仕事です。金融を取り巻く環境は、急速に変化しています。デジタル化によって代替される分野もありますが、資産運用ビジネスや企業の経営・財務上の課題へソリューションを提供する投資銀行ビジネスは成長分野です。キャリアは短距離走ではなく、マラソンです。倦(う)まず弛(たゆ)まず、地道にキャリアを築いていくことが重要です。

政策立案、企業経営、投資の判断に貢献できる研究を

銀行での仕事も、大学での仕事も、1人で完結できるものではありません。仕事は、必ず人との関わり合いの中で行うものです。私は仕事をする上で、常に「一期一会」の気持ちで、誠意を持って人と接することを心がけています。銀行員から研究者へ転身して「先生」と呼ばれるようになり、最初は戸惑いもありました。私自身は「我以外皆我師(われいがいみなわがし)」、つまり、私以外の皆が自分の先生だと思っています。実は、学生からも多くの気づきをもらっています。

今後は実務を踏まえた研究・実務に資する研究を深めることによって、政策の立案や企業の経営、投資の判断に貢献していきたいと考えています。変化が激しく先行きの不確実性が高い今日だからこそ、知の羅針盤となるような研究者になることを目指しています。

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