“選ばれる国”であり続けるために—外国人雇用とキャリア支援の現実と課題

愛知県豊橋市で技能実習生・特定技能を監理する、GSネットワーク協同組合の常務理事、杉浦銀二さんにお話をお伺いしました。

杉浦銀二さん

GSネットワーク協同組合常務理事 

杉浦銀二さん

大阪の塗装業者で3年間勤務したのち、祖父が創業した「株式会社エイコウ」で数年間キャリアを積む。

現在は、外国人技能実習生や特定技能外国人の受け入れ支援を通じて、人材不足解消に取り組んでいる。

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GSネットワーク協同組合のはじまり

GSネットワーク協同組合の母体には、25年に渡り、愛知県中部及び東三河エリアを拠点に、工場や製造業を営む事業者に対し、一般派遣業や業務請負業、有料職業紹介を行ってきた「株式会社エイコウ」があります。この会社は私の祖父によって創業したもので、私はその後継者として、大阪の塗装業者で3年間勤務した後、「株式会社エイコウ」の本社にて数年間キャリアを積みました。

キャリアの中で、私は外国人労働者の受け入れや管理を行う専門の監理団体へ移行し、その分野での知識と経験をさらに深めました。しかし、残念ながら理事長との間に意見の食い違いが生じ、最終的にはその団体を退職することとなりました。

退職後は、兼ねてより興味のあった自動車関連の業界に移ろうとしていたのですが、祖父の会社の役員から「仕事に慣れてきたところだったのにもったいない。監理団体の立ち上げを検討しているのだが、一緒にやらないか」と誘われたことで、人材業界に留まることを決意しました。

監理団体立ち上げは難航。設立に3年の歳月を要する

監理団体の立ち上げは、なかなか、思うように進まなかったというのが本音です。監理団体——外国人技能実習生受け入れに関する組合の設立には「4社以上の発起人」が必要不可欠な上、10社以上の企業と提携することが求められます(※1)。

しかし、複数の企業のベクトルを合わせるということは、決して簡単なことではありませんでした。例えば、設立においては、その企業の2期分の決算書を参照し、経営状態に問題はないか、実習生の受け入れに適した状態であるかを確認する必要があります。

このフローには、およそ三年程度がかかり、監理団体を設立したとき、当初19歳だった私は22歳になっていました。現在は、常務理事として、GSネットワーク協同組合の事業に、携わっています。

少子高齢化と円安が後押しする外国人労働者の雇用

「人は宝」という言葉が示すように、企業活動において人材は欠かせない要素です。実際、人材不足が原因で事業の継続が難しくなる企業も少なくありませんが、そのギャップを外国人労働者が埋めることで、企業の存続が可能になるケースが増加しています。特に最近では、その影響がより顕著になってきていると感じています。

例えば、近年は、少子高齢化の影響を受け、外国人労働者の受容がますます高まっています。

現在、就職活動を行っている24卒の方々が生まれた2001年の日本の合計特殊出生率は1.33と非常に低く、このような状況下において、企業が、必要な労働力を確保することは容易ではありません。

一方、円安の影響を受けて、以前よりも経済的な余裕がない外国人労働者にとっても、日本に来るハードルが低くなっています。このような状況を踏まえ、現在人材確保にお悩みの企業にとって、外国人労働者の雇用は非常に有力な選択肢となるでしょう。

外国人労働者の受け入れに関する課題として「コミュニケーションの問題」と「外国人労働者を教育する人材の確保」というふたつが挙げられます。

外国人労働者の雇用で直面する『コミュニケーション』と『教育』の壁

杉浦銀二さん

「コミュニケーション」の課題

多様な国籍・人種の人材を雇用することで、ある程度、解決できます。というのも、特定の国籍や言語のみを扱う人種のみを採用する場合、母国語でのコミュニケーションが主となってしまいます。このような状況下で、日本語力を育むことは難しいでしょう。

しかし、様々なバックグラウンドを持つ人材を雇用することで共通言語が「日本語」に限られます。結果、外国人労働者同士でも、日本語のコミュニケーションをとることになるため、日々の生活の中で、自然な日本語を習得することができるのです。

「外国人労働者の教育」に関する課題

これを解消することは、簡単ではありません。例えば、現在、外国人労働者の雇用に取り組んでいる経営者の中には「人を雇えば雇うほど、業務効率や生産性が向上する」という考え方のもと、むやみやたらに外国人労働者を雇用している経営者も少なくありません。

しかし実際のところ、外国人労働者の教育には、予想以上の労力がかかります。

現行の制度では、技能実習生として3年または5年間の実習を終えた後、特定技能ビザを取得することによって、さらに5年間の就労が可能となります。

これらのリスクを顧みずに、採用を行うことは、かえって業務効率を落とすことにつながりかねません。

外国人雇用にはサポートを積極的に活用

教育において最も重要なのは、相手が言語を十分に理解していないこと、また日本の文化にも慣れていないことをしっかりと認識し、それを踏まえた対応をすることです。

その上で、小さな子どもに接するような温かい気持ちと忍耐力を持って接することが求められます。

しかし、業務と並行してこれを実践するには、十分な余裕と時間が必要です。もしこれが難しいと感じる場合は、弊社のような管理団体が提供する専門的なサポートを積極的に活用することをお勧めいたします。

外国人労働者の未来を守る鍵は管理団体の姿勢にあり

近年においては、技能実習生をはじめとする外国人雇用制度が「奴隷制度」として非難されることが少なくありません。その背景には、一部の企業において外国人労働者が適切に扱われず、あたかも奴隷のように扱われている現実が存在しています。

それでも、外国人労働者に対して時給を支払うことに対して不満を持つ経営者も少なからず存在します。

私たちが提携している企業には、そういった問題を抱えるところは一切ありません。

これは言い換えると、これらの問題を解決できるかどうかは、管理団体の対応にかかっているということになります。

クライアントである経営者に対して、しっかりと『それではダメだ』と言える組合があるか、それによって、外国人採用の未来は大きく変わってくると言っても過言ではないでしょう。

外国人労働者のキャリア問題:意欲の差と支援の現状

杉浦銀二さん

外国人労働者のキャリアの問題は非常に複雑であり、私たちも現在、さまざまな議論を重ねています。

確かに、外国人労働者のキャリア形成を支援し、成長の機会を提供することは非常に重要だと認識しています。

しかし、その一方で、労働者本人の意欲やモチベーションの違いも大きな課題です。

中には「お金が稼げればそれでいい」と考える方もいます。

そういった場合、どれだけ良い環境を提供しても、実際に活用されないケースや、参加が難しいというケースも少なくありません。

そのため、外国人労働者のキャリア形成支援は、各企業の取り組みだけでなく、日本全体として取り組むべき課題だと感じています。

私たちの立場から全体像を語るのは難しいかもしれませんが、国がリーダーシップを持ってこの問題に取り組むことで、より効果的な支援が実現されるのではないかと考えています。

とはいえ、私たちも引き続き学びながら、現場での支援を進めていくつもりです。

※1
https://jsite.mhlw.go.jp/akita-roudoukyoku/content/contents/000402309.pdf

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