【株式会社オキュラボ社長】作業療法アプローチで叶える、誰もが役割と生きがいを持てる未来

作業療法技術に特化した事業を展開する株式会社オキュラボの代表取締役兼CEOを務める森島肇さん。
「生きづらさ、働きづらさをゼロに」という理念のもと、すべての人がウェルビーイングな人生を歩める社会を目指しています。
今回は、森島さんにキャリア形成における役割や生きがいの見つけ方、自己理解を深める方法についてお話を伺いました。

株式会社オキュラボ
代表取締役兼CEO
森島 肇さん

東京都立大学卒業後、国立病院機構に入社。長野、千葉、埼玉の病院で精神疾患を含む多種の障がいを持つ方の社会復帰支援に従事し、リハビリ科主任として10人の作業療法士を率いる。2017年に訪問リハビリと就労支援事業所へ転職し、2019年に在宅支援医療法人の訪問リハビリ部門を立ち上げ、リハビリ部長を務める。2021年からは同法人の最高執行責任者に就任。2022年12月、作業療法の社会実装を目指して株式会社オキュラボを設立。

全ての人が幸せな生活を維持できる受け皿を作る

私は、全ての人々が自分のやりたいことを楽しみ、幸せだと感じられる生活を維持できるような仕組みや環境を整えたいと考え、企業や個人向けに、作業療法アプローチを提供したいと思うようになりました。

元々は、母親が多発性硬化症という難病を抱えており、その病気を治したいという思いから、作業療法士になりました。

初めの頃は精神科で働いていて、社会復帰や職場復帰をサポートする中で、様々な臨床経験を積んできたのですが、社会全体を見ると、精神疾患を持つ人や障害者、さらには健常者も含めて、困難を抱えた時にそれを受け入れるための社会の受け皿がまだまだ不足していると感じたことが、作業療法アプローチを広めたいと思ったきっかけです。

作業療法は障害の有無に関係なくアプローチ可能なツール

企業やコミュニティ、そして周りの人々が、どんな状況でもお互いに支え合い、共に乗り越えられるような環境が必要だと思います。作業療法は元々は病気や怪我など、日常生活を送ることが難しくなっている人を対象としていますが、私個人としては、作業療法は、1人の人がより良い生活を送るための手段だと考えています。

たとえば、その人が困難に感じていることがあれば、それを克服するための生活環境や代替手段を考えることが作業療法の役割だと思います。障害があるかないかは関係なく、その人が直面している問題に対処するための手段を考えるということです。

ウェルビーイングの本質は社会的繋がり

私が考えるウェルビーイングとは、その人が幸せを感じられる状況や環境を持続できる状態だと考えています。特に、社会的な繋がりが重要で、人と繋がり、その繋がりの中で誰かに貢献できていると感じることが、ウェルビーイングの本質だと思います。

自分が幸せにしたい人たちに貢献できている、あるいは役に立てていると感じられる状態が、最もウェルビーイングな状態ではないでしょうか。

挑戦を避ける現代の風潮はもったいない

現代は、若い世代に限らず、何かを始める前に、挑戦すること自体を諦めてしまう人が多いように思います。失敗を恐れたり、他人からの評価を気にしたりして、経験を積まないまま過ごしてしまうことが多いようです。実際にやってみないとわからないことが多いのに、それを経験せずに終わってしまうのは、非常にもったいないと感じます。

だからこそ、失敗しても、間違ってもいいから、まずはやってみることが大切です。失敗したら、その逆を試してみればいいだけの話です。シンプルなことですが、時には複雑に考えすぎてしまったり、失敗を恐れて萎縮してしまったりすることもあります。しかし、実際に行動してみることが、成功への第一歩だと思います。

若手人材が職場でやりがいを見つける方法:たくさん経験を積む

若手の人たちが職場で自分のやりがいを見つけるためには、まずは経験を積むこと、失敗を恐れずに何事にも挑戦することが重要です。ただし、時間は限られているので、やりたいことをリストアップし、どれから始めるか優先順位をつけると良いでしょう。

その過程で、自分にとって何がつまらなくて、何が面白いと感じるのか、見極めてください。新卒時の就職活動で自分に合った職場を見つけられれば理想的ですが、もし職場が合わなかった場合でも、自分にとって何が問題だったのか、どんな状況なら満足できるのかを客観的に考えていくと良いでしょう。

定年退職後の生きがいの見つけ方:自分が担っていた役割を見直す

たとえば、仕事を通じて人とコミュニケーションをとることが自分の役割であり、それが楽しいと感じていたのであれば、その喜びを他の場所でも再び見つけ出すことができるはずです。

重要なのは、その会社にいたこと自体ではなく、自分が行っていた役割や活動に生きがいを感じていたのだと理解することです。生きがいは特定の場所や環境に縛られるものではなく、自分が何に価値を感じ、どのような活動に喜びを見出すかを理解できれば、それを他の場所でも継続することが可能です。

充実した人生を送る秘訣:自己理解を深めること

幸せを理解している人たちは、やはり豊富な経験を積んでいるからこそ、自分に合うものがわかり、自分のことをよく理解しています。自分にとって何が幸せで、何が楽しいのか、また何が合わないのかをしっかりと把握しているからこそ、充実した人生を送ることができるのです。

仕事においては、ときには、自分の好みに関係なくやらなければならないこともあるでしょう。しかし、それをこなした後に、自分にとって楽しいことができるという見通しがあれば、頑張る意欲も湧いてくると思います。

ただ、自分が何を楽しいと感じるのかを理解していないと、「やらされている」という感覚に陥り、なぜこれをやらなければならないのかというモヤモヤが生じてしまいます。だからこそ、経験を通じて自分の好きなことや、幸せを感じる瞬間をしっかりと把握することが大切です。

自己理解を深めるメリット:自分と他者の違いが理解できる

自己理解を深めると、自分の好きなことや嫌いなことが明確になり、自分の価値観や基準がしっかりしてきます。また、自分と他人との違いも理解でき、他者とのコミュニケーションがスムーズになります。

というのは、自分と相手が違う人間であることを理解できると、お互いが異なる考え方を持っているのは、違う経験をしてきたからだと受け入れることができるからです。相手に自分と同じ考え方を求めなくなるので、意見が食い違っても理解しやすくなり、多様性を受け入れたコミュニケーションが可能になります。

自己理解不足はメンタル不調に繋がる

メンタル不調を起こしやすい人は、他人に合わせすぎたり、我慢を重ねてしまい、自分の本当の気持ちや状態を把握できていないことが多いです。その結果、何が自分にとって良い状態なのかが分からず、ストレスを溜めやすくなります。

このような人にとって大切なのは、自己理解を深めることです。自分がどのような状態だと快適に感じ、どのような時にストレスを感じるのかを知ることが重要です。

「他者を理解するには時間がかかる」という前提を持つ

人間関係は機械のように単純ではありません。時間をかけて他者理解に努めることが重要です。

たとえば職場で、上司との関係がうまく構築できなかったり、理不尽に怒られているように感じたときは、「もしかしたら上司は家庭で問題を抱えているかもしれない」と考えることも一つです。嫌だった上司のことを自ら理解しようと努めると、逆に上司も自分のことを理解しようと歩み寄って、良い関係を築けるかもしれません。

人生100年時代の転職:企業理解よりも大切な自己理解

人生100年時代においては、転職は避けられないものだと考えています。自分のやりがいや働きがいを見つけるためには、転職が必要になることが多いと思います。その際、企業そのものを選ぶのではなく、まずは自分が何をしたいのかをはっきりさせましょう。その後、興味のあることができる企業を選ぶと良いでしょう。

また、現在の教育システムや社会の価値観が、自分の本当の望みを明確にするサポートをしていない場合が多いと感じます。特に日本では「大企業に勤めれば幸せだ」という古い価値観が残っているため、そこに流されずに、自分自身の願望をしっかりと考えることが重要です。自分が何を求めているのかをしっかりと見極めることで、より満足できるキャリアを築けるでしょう。

株式会社オキュラボは個人と企業にコーチングサービスを提供

現在、オキュラボでは、企業向けに従業員のメンタル不調による休職や離職、働く意欲の低下といった問題を解決するためのサポートを行っています。社員が自分自身をより深く理解することで、自分に最も適した役割を見つけ、仕事に対する喜びを感じられるように導きます。これにより、全社員が働きがいを感じられる職場作りを支援し、企業の持続的な成長をサポートしています。

また、自分に自信が持てず生きづらさを感じている方に向けて、自分を好きになるためのコーチングサービスも提供しています。

自分の好きなこと「オキュペーション」を見つけるサポート

幸せな人生を送るためには、まず「自分の好きなこと」を見つけることが大切です。作業療法士の間では、これを「オキュペーション(作業)」と呼びます。オキュペーションとは、自分にとって重要な活動や行動のことで、心から打ち込みたいと思えるものを指します。

このオキュペーションを見つけることが、心の健康にも大きな役割を果たします。自分にとって大切な活動を持っていないと、メンタルの不調やストレスを感じやすく、社会から孤立してしまう可能性があります。そのため、私たちは、このオキュペーションの大切さや概念自体をもっと広げていきたいと考えています。

オキュペーションを持っている人は、ストレスがあっても自分で乗り越えたり、セルフコントロールができることが多いです。私たちが目指しているのは、誰もが作業療法的な視点を身につけ、自分自身を理解し、セルフコーチングができるようになることです。まずはコーチングを通じて自己理解を深め、その後、継続的に自己管理できるスキルを持ってもらうことを目指しています。

誰もが生きがいを持てる世界へ

今の社会では、多くの人が効率を追い求め、何事にもコストや時間のパフォーマンス(コスパやタイパ)を重視する風潮が広がっています。そのため、自分にとって本当に何が必要かをしっかり考える機会が少なくなっているように感じます。

その結果、承認欲求が強くなったり、自分に合ったものがわからず、メンタルの不調を起こしやすい人が増えてしまっているようです。自分を理解してくれる人がいない、自分に何が向いているのかわからない、といった悩みを抱える人も少なくありません。

私たちは、そのような問題を改善したいと考えています。人々が「自分にとって必要なもの」「自分が本当に好きなこと」「時間をかけてでも取り組みたいこと」などをしっかり考え、それを見つけられるようにサポートしていきたいです。全ての人のパートナーとして寄り添い、社会がもっと生きやすくなるような関わりを持ち続けたいと願っています。

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