【東京都立大学大学院教授】若い世代に経済や金融を学ぶ醍醐味を伝えるために、銀行員から研究者へ転身金融業界で躍進するためには、文系的な知識だけでなく数理的な分析力が重要

今回は、東京都立大学大学院ファイナンスプログラムにおいて教授を務めている、吉羽要直先生にお話を伺いました。

吉羽先生は日本銀行に約30年在籍し、ファイナンス研究やリスク管理において啓蒙活動を行ってきました。

これからの金融業界に求められる力は何か、長年金融業界で活躍してきた吉羽先生の視点からお話しいただきました。

東京都立大学大学院
ファイナンスプログラム
教授 吉羽要直先生

1993年に東京大学大学院計数工学専攻を修了したのち、日本銀行に入行。
在職した約30年のうち約20年間は金融工学、ファイナンスの研究に従事したほか、金融機関へのリスク管理の啓蒙に従事した。
2019年から東京都立大学大学院ファイナンスプログラムにおいて教授、2021年からは専任の教授を務めている。

理系学部に入学するも、経済学に魅力を感じファイナンス研究へ

私は大学時代、理系の学部に入学しました。しかし、1年次に受けた経済学の授業において、効用の最適化によって消費量が解析的に求められることを学び、大変興味深く感じたのです。このことが、のちにファイナンス分野の研究の道を選んだきっかけになりました。

同時に経済や金融の発展につなげるためには、実務での応用を意識しながら必要な数理技術を身に付けなければいけないと実感。金融業には、文系知識と理系知識の両方の知見が必要だと考えるようになりました。

実務の場で役に立つ研究を意識

吉羽要直先生
参照:ReseMom

私が研究しているのは、金融のデータを数理的に分析する金融データサイエンスです。その中でも、特に「多くのリスク要因を持つ場合、全体のリスクにどのような影響を及ぼすのか」について分析しています。例えば、複数資産の保有リスクを把握する際に、資産価格が同時に大きく下落することなどについて研究しています。

これまでの枠組みでは、複数資産の価格変動は線形相関で捉えることが多い傾向にありました。しかし、それではリスクを過小評価する可能性が高いため、数理的な分析を深める必要があったのです。このような理由から、こちらの研究をさらに深めたいと思いました。

私は研究を行う際、論理的な整合性を保つことを重視しています。また、その研究が実務の場で役に立つものであるかどうかに着目しながら、進めていますね。それに伴い、授業もなるべく実務に沿った内容にするなど、現場で活きる研究を意識しています。

自分が行った研究が今なお参照され続けていることが誇らしい

参照:Journal of Banking and Finance

これまで携わってきた仕事の中で特に印象に残っていることは、金融リスクに関する指標である「Value-at-Risk(VaR)」に対し、VaR以上の期待損失を求める「期待ショートフォール」との比較分析の課題に取り組んだことです。研究したサーベイは、学術誌である『Journal of Banking and Finance誌』に掲載されました。20年近く経った今でも参照されることが多いほど有益な分析となり、達成感がありましたね。

また、「VaR」と「期待ショートフォール」の比較分析での成果に加え、その中で言及した資産変動間の柔軟な相関構造を表す接合関数(copula)の研究にも取り組みました。この成果も多くの金融実務家や研究者に参照されており、大変誇らしく感じています。

金融業界で活躍するためには、数理的な分析能力が不可欠

吉羽要直先生
参照:ReseMom

金融業界は文系的な調整能力が必要ですが、論理的な思考と数理的な分析能力を身に付けておくことが近年では重要になってきていると思います。特に、インターネットの情報など大量データを処理し、数理的に分析していく能力が強く求められるようになってきています。

これから金融業界で働きたいと思っている若い世代の方も多いと思いますが、インターンシップなどを通じてどのような仕事があるのかに触れて、数理分析能力を身に付けておくことがおすすめです。

金融リスク管理関連の学界をけん引していきたい

吉羽要直先生
参照:東京都立大学

最後に私の今後の目標として、これからはサステナブルファイナンスも含め、金融実務で生じている問題を踏まえた上で、その問題解決に役立つような基礎的な理論やモデリングを追究していきたいと考えています。そして、金融リスク管理関連の学界をけん引していきたいです。

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