元エンジニアが見た、保育業界の課題と人材育成の未来

保育園・こども園・幼稚園等の人材支援コンサルティング、保育者のキャリアコンサルティング、研修講師などをされている谷口さん。

保育者の働きやすい環境づくりを通して、子どもたちがのびのびと育つ社会を目指しています。今回は、谷口さんに保育業界の課題や改善策、保育士のキャリア形成における自己決定の重要性についてお話を伺いました。

谷口真紀さん

一般社団法人キャリアヘルス研究所
代表理事
谷口真紀さん

徳島県出身。東京大学工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修了。

電機メーカーで開発・設計エンジニアとして8年勤務後、キャリアコンサルタントに転職。

スウェーデンで2年を過ごし、レッジョ・エミリエ・アプローチを行っている保育園に自身の子ども達が通う。

国立大学キャリアサポート室、若年者の就労支援施設等の経験をもとに、2016年独立。

保育園・こども園・幼稚園等の人材支援コンサルティング、保育者のキャリアコンサルティング、研修講師を主に行っている。

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保育のキャリアコンサルティングを志したきっかけ

私は、エンジニアとしてキャリアをスタートし、大学のキャリア相談室スタッフを経て、働く人のキャリアと健康支援を行う会社を設立しました。子育て経験を通して、女性のキャリア支援や保育業界に興味を持ち、保育園のセルフ・キャリアドッグ制度の導入支援をきっかけに、本格的に保育業界に関わるようになりました。

保育業界の環境

近年、待機児童問題や保育の質向上など、保育業界を取り巻く環境は改善してきています。しかし、その一方で、依然としてさまざまな問題を抱えています。

  • 深刻な保育士不足
  • 低い給与水準
  • 高い離職率

深刻な保育士不足は、多くの保育園で定員を満たせない状況を生み出しています。また、保育士の給与水準は他の職種と比べて低く、長時間労働や業務負担の大きさに見合っていないことも少なくありません。これらの要因が、高い離職率につながり、慢性的な人材不足に拍車をかけています。

保育士の働く環境改善は、未来を担う子どもたちの健やかな成長を支える上で、早急に取り組むべき課題です。保育士一人ひとりが、子どもと向き合う喜びややりがいを感じ、安心して長く働き続けられる環境づくりが必要不可欠です。

そのためには、下記のような改善が必要になります。

  • 待遇の改善
  • 業務負担の軽減
  • キャリアアップ支援
  • メンタルヘルス対策

多角的な視点からの取り組みが求められています。保育士が誇りを持って働ける環境を整備することが、質の高い保育へとつながり、子どもたちの未来を明るいものにしてくことができます。

保育士不足解消に向けた課題

保育士不足が深刻化する中、人材紹介会社は重要な役割を担っています。しかし、保育業界の人材紹介には多くの問題点があります。

  • 高額な手数料
  • ミスマッチによる離職率の増加
  • 費用対効果が低い
  • 人材紹介会社に依頼しても、質の高い人材が確保できない

など、中には保育士のキャリア形成よりも、自社の利益を優先するところもあり、保育士と保育園の双方にとって負担が大きいのが現状です。

保育士のキャリア形成

保育士が充実したキャリアを築くために最も重要なのは「自己決定」であると考えています。転職エージェント任せにせず、自分で情報収集し、主体的に行動することです。

特に新卒の保育士は、経験が浅く、自分のキャリアプランを描くのが難しい場合も多いでしょう。だからこそ、周りの意見に流されるのではなく、自分の考えや価値観に基づいて、将来のビジョンを自分なりに思い描くことが大切ですね。

保育士の仕事を選ぶ時点で、子どもを育むことに対する情熱や責任感を持っている人が多いです。その上で、自分のキャリアに向き合い、自ら行動を起こすことで、より良い未来を切り開くことができると思っています。

保育士が長く働き続けるために

保育士が長く働き続けるためには、職場との良好なコミュニケーションと自己成長が不可欠であると考えています。上司や同僚と積極的に対話し、自分の強みや弱みを理解して、保育士自身が学び続けることも重要です。

新人保育士は、わからないことは積極的に質問し、周りの助けを借りながら成長していくこと、経験豊富な保育士は、自分の経験や知識を後輩に伝え、チーム全体で保育の質向上を目指すことも大切です。

保育業界の未来

谷口真紀さん

保育業界は、未来を担う子どもたちの成長を支える重要な役割を担う仕事です。その一方で、保育士不足や低い処遇など、多くの課題を抱えています。この課題を改善し、頑張っている保育者を支えることで、子どもたちの貴重な幼児期をしっかり支えられる環境を作りたいと思っています。

保育園は、理念や保育内容、労働条件などを公開し、求職者が自分に合った職場かどうかを判断できる環境を作る必要があります。透明性の高い情報公開は、求職者と保育園のミスマッチを減らし、定着率向上にもつながります。

また、保育士自身も、主体的にキャリアを築く意識を持つことが重要です。自分のキャリアプランを明確化し、スキルアップや自己研鑽をすることで、専門職としての誇りを持ち、より質の高い保育を目指せるようになります。

私たちは、今働いている職員を大切にするという観点から保育の人材支援を行っています。研修とキャリアコンサルティングを通して、保育士が働きやすい環境づくりを支援しています。

誰もが、自分を尊重しながら、他者も尊重できる、そんな社会になることが理想です。

保育や幼児教育の重要性への理解が、もっと社会に広がっていくことを願っています。

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