経験を武器にする!キャリアコーチが教える“自分に合う仕事”の見つけ方

今回は、キャリア支援に特化したサービスを提供する「株式会社ビータップ」代表・柳瀬浩之さんに、これまでの経歴やキャリアアップについてお伺いしました。

柳瀬浩之さん

株式会社ビータップ
代表
柳瀬浩之さん

株式会社ビータップ代表取締役/経験学習デザイナー。

経営コンサルティング会社、ドーム株式会社を経て、2013年3月に独立。その後、10年にわたり、企業研修のファシリテーター・アセッサーとして、管理職のリーダーシップ開発・アセスメントに従事する。

経験学習×体験デザイン×編集工学に基づく経験学習デザインを活用し、企業向けに人材開発・組織開発、個人向けにキャリアコーチングRYOMEIを展開。

キャリアデザイン研究を日本デザイン学会に寄稿する。

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「30歳までに独立」同期の存在が後押しした起業への道

―独立する前は会社員として働いていたとのことですが、その頃から独立を考えていましたか?

はい、学生の頃から独立したいと考えていました。独立や起業を見据え、それを踏まえて最初の会社を選びましたね。

新卒で入った会社では、同期の多くが僕と同じように独立や起業を目指しており、「30歳までには独立しよう」という目標を共有していました。

それもあって、29歳になったときには「もうすぐ30歳だから、そろそろ独立しなきゃな」と強く感じましたね。

ー独立を決意するうえで、同期の存在も大きな影響を与えたのですね

そうですね。同期の存在は非常に大きかったです。

僕が独立する前に、すでに同期の4分の1が独立していました。その姿を見て、「自分も早く独立しなければ」と刺激を受けたことが、大きなきっかけの一つになったと思います。

柳瀬浩之さん

事業内容ゼロからのスタート!独立準備と軌道修正のプロセス

―独立に向けて、どのような準備をされましたか?

大学時代から起業家の話を聞いたり、情報を集めたりしていました。また、ベンチャー企業でインターンとして働き、実際のビジネスの現場にも触れていました。

社会人になってからは忙しく、独立を意識する余裕がありませんでしたが、27歳頃から改めて準備を再開。ビジネススクールに通ったり、メンタルトレーニングを取り入れたりしながら、自分への投資を続けました。

ー計画的に独立準備をされていたんですね

準備はしていました。ただ独立に向けてスキルアップや知識の習得には取り組んでいましたが、独立後に具体的にどのような事業を展開し、どのように進めるかまでは、なかなか決まりませんでした。

当時は仕事が忙しく、十分な準備をする時間がなかったため、まず「会社を辞める日」を決め、その日までに可能な限り準備を進めながら、具体的な方向性を模索していきました。

「どこで勝負する?」模索し続けた起業初期の試行錯誤

―独立してからはどうでしたか?

最初の2年間は手探りの状態でしたね。自分に何ができるのかを模索しながら、10〜15種類ほどの仕事に取り組んでいたんです。どの分野で成功できるのかが分からなかったため、「まずはできることから始めよう」と考えていましたね。

「人の育成に関わりたい」という思いは明確でしたが、具体的にどのような形で関わるかはまだ決まっていなかったんです。

小学生向けの塾や大人向けの研修など、さまざまな経験を積む中で、最も自分に合っていると感じたのが企業研修の講師でした。

ー独立して最も難しかったことは何ですか?

「どこで勝負するのか?」を決めることが、独立後最大の課題であり、一番難しい点でしたね。

研修事業に取り組むと決めた後も、さまざまな仕事に挑戦しました。その中にはうまくいったものもあれば、思うようにいかなかったものもあります。

そうした経験を積み重ねる中で、自分にとって成果が出やすい分野や、勝負できる領域を少しずつ見極めていきました。

ーキャリアを考えるうえでも、自分に合った分野や領域を見極めることは重要ですね

そうですね。僕自身、多くの研修を経験し、今ではどんな相手にも対応できる自信があります。しかし、それでも「私の研修が好き」と感じる人もいれば、そうでない人もいるのは事実です。

どれだけ努力しても、合わない環境では長期的な成功は難しいものです。独立や起業に限らず、キャリア全般においても、自分に適した分野や事業を見極めて選ぶことが、成功の大きなカギになると考えています。

柳瀬浩之さん

企業研修とキャリアコーチングで支援!現在の事業とは?

―現在ビータップで行われている事業について詳しく教えていただけますか?

今手がけている事業は大きく2つあります。企業向けの研修と、個人向けのキャリアコーチング事業です。

企業向けの研修では、新入社員から管理職まで、幅広い層を対象に研修を実施しています。先方の会社で実施する場合もあれば、外部の研修会場を利用することもあります。さらに、最近ではオンラインで研修を行うこともありますね。

個人向けのキャリアコーチングでは、一人ひとりに寄り添いながら、キャリアの方向性を共に考えていきます。ほとんどの方がZoomなどを利用したオンライン形式で受講されていますが、ご希望があれば対面でのコーチングも可能です(※近隣にお住まいの方に限ります)。

また、チャットなどを活用し、日々のやりとりを通じて継続的にサポートを行っています。

―企業向け研修はどのような内容ですか?

企業向け研修では、特に管理職のマネジメント能力の開発を支援しています。具体的には、管理職の能力や強みを分析するアセスメントを実施し、その結果をもとに個々の強みや仕事の傾向を把握します。そのうえで、適切なマネジメントスタイルを提案します。

例えば、「このようにマネジメントすると成功しやすいです」「この点は課題になりやすいので注意しましょう」といった具体的なアドバイスを提供し、実践的なサポートを行っています。

―個人向けのキャリアコーチングについても詳しく教えてください

具体的な支援としては、自己分析と、プロのアセスメントの分析によって、強みを明確にします。その後、長期的なキャリアプランを一緒に模索して、言語化・視覚化していきます。

方向性が定まったあとは、履歴書の作成や面接対策など、転職活動を具体的にサポートしています。

40代でも転職は可能!成功のために必要な視点とは?

ー具体的には、どのような方が相談に来られるのでしょうか?

僕らは35歳以上の方を対象に支援を行っており、特に40歳前後の方からの相談が多いです。

たとえば、「家族がいて失敗はできないけど、新たな職種にチャレンジしたい」「これまで会社のために働いてきたけど、この先の将来が不安」と感じている方がよく相談に来られます。

彼らに共通するのは、「これからどうキャリアを築いていけばいいのか」が見えなくなっていること。自分にどんな仕事が向いているのか分からず、やりたいことも見つからない。そんな状況で、今後のキャリアをどう進めるべきか悩んでいる方が多いと感じています。

―転職経験がないミドル世代でも、キャリアアップは可能でしょうか?

はい、可能です。

たとえば、支援させていただいた方の中に、転職経験がなく、長年特定の会社で独自の業務に従事されてきた方がいました。

その方は社内の人間関係のトラブルによりやむを得ず退職され、「自分は他の職種で活かせるスキルがないうえ、40歳を超えているので転職は難しい。独立を考えているが、どうすれば実現できるか」と相談に来られました。

しかし、私はその方の状況を踏まえたうえで、独立は現実的ではないと判断し、「転職を目指しましょう」とご提案しました。

ー安易に「転職は無理だから独立しよう」と考えるのは危険なんですね

そうですね。最近は「独立は簡単だ」と誤解を招く情報があふれており、転職よりも独立の方が簡単だと思っている方がいるようです。しかし、実際はそうではなく、むしろ転職の方が実現しやすく、独立の方が難しいと考えています。

そのため、独立を希望される方であっても、「今の状況で独立しても成功する可能性は低い」と正直にお伝えすることもありますね。そのうえで、より現実的な選択肢として転職を提案し、具体的にどのような可能性があるのかを丁寧に説明するようにしています。

ー40代でも転職はできる、ということですね!

そうですね。少子高齢化などさまざまな理由で、企業側も採用に苦労しています。
ですから、20代や30代と比べると選択肢の幅は狭くなるかもしれませんが、40代でも、これまでの経験やスキルを活かせることを伝えられれば、転職は可能です。


大切なのは、「これしかない」という視野が狭い状態で選択するのではなく、「これもある」と視野を広げて、選択肢が多い状態で最適な選択を行うこと。
そうすれば、ミドル世代であっても、キャリアを向上させることができます。

個人の力だけでは限界!「いいチーム」の作り方とは

ーいい仕事には個人の力だけでなく、チームづくりも欠かせません。「いいチームを作るコツ」があれば教えていただけますか?

良いチームを作るうえで重要なのは、「柔軟性を保つこと」と「率直に意見を言える環境を整えること」の2つです。

まず最も大切なのは、お互いが率直に意見を交換できる環境を整えることです。これが欠けていると、物事は前に進みません。そのため、考えていることを正直に伝え合い、本音で相談できる関係を築くことが不可欠です。

ーなるほど、率直に意見を交換できる環境が大前提なんですね

そうですね。まずはお互いの信頼関係を築くことが大切です。そのうえで次に重要なのが、組織を柔軟に変えていくこと。

たとえば、目標やその達成方法、プロセスがあらかじめ決まっていると、メンバー全員がその枠組みに従わざるを得なくなります。これは、適応しやすい人もいれば、負担に感じる人もいるでしょう。そうした状況を防ぐためにも、メンバーそれぞれに合った方法を模索し、目標やプロセスを柔軟に調整することが必要です。

そうすることで、お互いの意見が反映され、全員が当事者意識を持って取り組めるようになります。

柳瀬さんの思考のベースを作った本『なぜ人と組織は変われないのか』

―最後に、これまでに参考にした書籍があれば教えてください

『なぜ人と組織は変われないのか—ハーバード流—-自己変革の理論と実践』という本です。

著者が来日された際に直接お話を伺う機会があり、個人的に特に思い入れの深い一冊ですね。独立3年目頃に読んで、その考え方に強く共感し、とても良い本だと感じました。

私の考え方のベースになった一冊だと思います。

本の基本情報

ロバート・キーガン/リサ・ラスコウ・レイヒー(2013/10)『なぜ人と組織は変われないのか—ハーバード流—-自己変革の理論と実践』 (英治出版)
https://amzn.asia/d/fmBz6Dx(参照2025-02-05)

柳瀬浩之さん
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