「人と人を繋ぐ」の理念のもと、システム開発事業やオフショア開発事業などの、多様なサービスを提供している、SUN株式会社の仲宗根 俊平代表にお話をお伺いしました。

SUN株式会社
代表
仲宗根 俊平さん
2006年、帝京大学文学部 卒業。保険業や広告業の営業を経験した。2012年にはIT業界に転職し、業績が認められて入社から4年で取締役に就任する。
2018年SUN株式会社を設立。代表を務める。
SUN株式会社の取り組み:IT業界の人手不足解消に向けた施策とは?
IT業界の現状と、SUN株式会社の取り組み
SUN株式会社では、「人と人を繋ぐ」という理念のもと、IT業界の人手不足を解消するための施策を数多く行っています。というのも、経済産業省の調査によると、IT人材の需要は2030年には164万人に達すると予測されています(※1)。
これに対して、ヒューマンリソシア株式会社の調査では、日本国内のエンジニア数が2022年の時点で144.0万人を超えており、需要と供給のギャップが広がり続けていることがわかります(※2)。近年においては、少子高齢化の影響もあり、国内での人材確保がますます困難になりつつあります。
近年では、このような状況に対応するため、オフショア開発に乗り出す企業が増えており、弊社では、そういった企業の採用活動を積極的に支援しています。

IT人材確保の鍵はバングラデシュにおけるオフショア開発にあり
弊社がオフショア開発を積極的に後押ししている国のひとつに、バングラディシュがあります。バングラデシュは1.7億人以上の人口を擁し、北海道の1.9倍の面積に、日本より多くの人々が暮らす国です。人口密度が非常に高く、特に若年層の割合が大きいことが特徴です。
バングラデシュでは近年、教育環境が大きく向上し、特にエンジニアリング分野を学ぶ学生の数が急増しています。このような背景から、バングラデシュでの人材開発に魅力を感じ、進出する企業が増加しています。また、バングラデシュはフリーランスエンジニアの数が世界一という点でも注目されています。IT業界が急成長しており、今後さらに多くの優秀なITエンジニアが登場することが期待されています。この成長に伴い、IT企業の発展が続くと予測されています。弊社もこの流れを受けて、現地の人材の採用支援を行っています。
全国と海外を結ぶシステムインテグレーション事業の展開
弊社では、上記のオフショア開発支援事業に加えてさまざまな業種・業界に対応したシステムインテグレーション事業を展開しています。
システムインテグレーション事業では、複数拠点を活用したビジネスモデルを採用しており、例えば東京と福岡のメンバーが一つのチームとして協力し、効率的にお客様のニーズに応えています。東京には多くの顧客が集中していますが、実際には全国各地の拠点が連携し、一体となってプロジェクトを推進している点が特徴です。
なお、国外の拠点においては、日本人のプロジェクトマネージャーがフロントに立ち、現地チームとの密接な連携を図りながら、仕様や設計書を十分に理解した上で開発を進めています。この体制により、クオリティと納期を守りつつ、コストパフォーマンスに優れたサービスを提供できる体制が整っています。
外国人支援事業と地域連携で広げる、多様性の輪
上記の事業と合わせて、外国人支援事業を展開しており、現在は日本語を学びたい外国人向けのアプリを開発・提供しています。このアプリはGoogle PlayやApple storeなどから誰でもダウンロード可能で、法人や学校向けにも日本語教育を提供しています。オンラインレッスンや、学習者の進捗管理、企業内での日本語教育の管理機能も備えています。
また、別途で、地域貢献活動として東京都港区で「子ども食堂」を実施しています。この活動では、外国人家庭の参加者も多く、人と人をつなぐ理念のもと地域交流を深めています。
さらに「外国人雇用協議会」の社団法人の理事を務め、外国人にとってより良い日本社会を作る活動にも積極的に関与しています。
人と人をつなぐ理念が築く信頼
弊社は「最後までやりきる」「お客様に寄り添う」ことを何よりも大切にし、技術力の向上にも常に取り組んでいます。これにより、どの企業にも負けない自信を持っています。
この自信は、私たちの理念「人と人をつなぐ」に基づいています。確かに、弊社の責任者は高度な技術を要するプロジェクトにも携わってきましたが、最も大切なのは、最終的にお客様から信頼を得ていることです。それは、やりきる姿勢とお客様への深い思いやりが根底にあるからだと考えています。
お客様のために最後までやりきるためには、責任者のリーダーシップが不可欠です。
責任者はチームの状況を把握し、最適な判断を下しながら、円滑なプロジェクト進行を支えています。メンバーとの信頼関係を築くことが、最終的に成功につながるといっても過言ではないでしょう。
責任者として最も重要なのは、部下を裏切らず、その成長をサポートする姿勢を示すことです。部下に「君たちを成長させる」と伝え、その信念を行動で示すことができる責任者こそが、チームをやりきる力で導く存在だと確信しています。
「人と人をつなぐ」企業理念の原点は幼少期の経験にあり
事業の原点は「アメリカ」での経験
私がこのような事業を行う背景には、幼年期に、アメリカに居住していた経験が関わっています。私はその中で、言語や国籍に関係なく、同じ教室で学ぶ際に最も大切なのは「人との関わり」や「コミュニケーション」であることを強く実感しました。この経験を通じて、「人と人をつなぐ」というテーマに深く影響を受け、これが私の根幹にある価値観のひとつです。
仕事の面では、長年営業職に従事してきました。「人との関わり」に深く向き合い、多くの経験を積んできたことが、現在の事業の基盤となっています。
会社設立の背景にあった”確信”
会社の創設の際には、グローバルな視点を持ち、海外の人材の力を借りながら、事業を成長させたいという強い意志が根底にありました。前職でIT業界に携わっていた経験を活かしつつ、事業をスタートしましたが、業界や職種にかかわらず「人と人とのつながり」が最も重要だと信じています。優れたエンジニアや経営者、営業担当が揃っていても、信頼関係がなければ企業の成長や社会への貢献にはつながらない、という確信がありました。この信念を基に「人と人をつなぐ」という企業理念を掲げ、会社を設立したのです。
グローバリズムと多様な人材活用へ
また、グローバリズムは、昨今のIT業界で成功を収めるために欠かせない要素の一つです。例えば、プログラミング業務において、使用する技術やツールの多くは海外発のものであり、日本特有の言語や環境に依存せず、海外のリソースを活用して業務を進めることが一般的です。こうした状況から、IT業界で働く場を日本に限定する必要はないと感じています。
将来的には、国連加盟の192カ国すべてにオフィスを設け、世界中から多様な人材を迎え入れることを目指しています。人種や国籍の垣根を越え、フラットで多様なつながりを築くことが、私の理想です。

外国人労働者との文化的ギャップに挑む:日本語教育の新たなアプローチ
外国人労働者取り巻く現状と、課題
弊社では先述の通り、グローバルな環境の構築に対して、積極的な働きかけを行っています。出入国在留管理庁の調査によると、外国人労働者の受け入れに伴う課題として「日常生活におけるルールの理解に関するトラブル」を挙げていた事業者の割合は、32.3%で、これは、2番目に多い結果となりました(※3)。
弊社も、事業を進める中で、そのようなトラブルに幾度となくぶつかってきました。私たちは、こうした課題が完全になくなることはないと考えています。例えば、バングラデシュの子どもたちの写真が象徴するように、私たちがバングラデシュの文化を100%理解することは難しく、今後もそれを完璧に理解できる人は限られるでしょう。文化や言語の違い、家族に対する価値観の相違など、こうした課題は今後も続くと予想しています。

増加する外国人人口と進まない日本語教育
また、このようなトラブルは、日本語教育の徹底不足が一因と考えられます。しかし、日本では外国人向けの「日本語教育市場の優先順位」が低く、十分な教育環境を整えることが難しいのが現状です。
現在、日本には約390万人の外国人が住んでおり、今後も増加の一途をたどる見込みですが、これに対して、日本語教育を必要としている人の割合は100万人以下です。この限られた市場の中で、教育や日本語学習に充てられる予算は限られており、優先順位が低いため、収益面での課題も少なくありません。2060年には、外国人人口が600万人に達すると予測されていますが、それでも日本語教育のニーズを引き出すことは依然として難しいと感じています。
齟齬を解決するための鍵は「社内日本語教師の雇用」
齟齬を解消するためのアプローチとして、当社では、社内で日本語教師を雇用しています。近年、IT業界をはじめ多くの業界で外国人を雇用する企業が増加していますが、ほとんどの企業は日本語教育を外部に委託しています。しかし、当社のように日本語教育を社内で提供し、専門の教師がしっかりとサポートする体制を整えている企業は珍しいと感じています。この点が他社との大きな差別化要素だと考えています。
日本語教育者を雇用することのメリットは、教師が会社の文化やビジネスモデル、理念を理解している点にあります。この前提があることで、単なる日本語の指導だけでなく、企業の大切にしている価値観に基づいた教育が可能になります。外部の日本語教師に依頼した場合、日本語教育はあくまで言語の習得に留まりがちですが、社内の日本語教師を雇用することで、企業文化を反映させた統一感のある教育が実現できる点が大きな利点です。
成長を支える「チャレンジ精神」の育成:目標達成のための実践的アプローチ
チャレンジ精神の育成と目標達成に向けた実践的アプローチ
さらに、企業の成長に欠かせない「チャレンジ精神」の育成においても、弊社は積極的に働きかけを行っています。ここで重要なのは、設定したゴールを常に追い続け、それを決して変えないことです。
例えば、弊社がバングラデシュに拠点を作るという目標を掲げた際、私は全く縁もゆかりもない国で、わずか1ヶ月で社員を1〜2名雇用することを目指しました。そして実際に現地に赴き、3名を雇用することができました。この経験は、目標達成のために必要な行動を徹底的に貫き通した結果だと思っています。現地でのアクションに関しては、特別な手法は必要ないと考えています。最も大切なのは「足で稼ぐ」ことです。ネットで情報を集めるのではなく、実際に現地に足を運び、自分の目で状況を確認することで、初めて明確なイメージが湧き、その後の行動に繋がると確信しています。
社員のチャレンジ精神を育む『アイデアコンテスト』
また、社員のチャレンジ精神を育む場として、「アイデアコンテスト」を適宜開催しています。今年で2回目となるこのコンテストの目的は、社員の思いや考えを形にする環境を作り、会社の成長に繋げることです。テーマは設定しますが、社員が自由に応募できるようにしています。応募は個人でもチームでも可能で、まずは社員による投票で最終選考に進むチームアイデアを決定します。役員は投票には参加せず、最終的な選考は私を含む役員が行います。このように、社員の思いを形にすることを大切にし、チャレンジ精神を持って応援する環境を意識的に作り上げています。
変化の激しいIT業界で求められる普遍的なスキルとは
「お客様の意図を汲み取る」ことの重要性
IT業界は日々進化しており、変化のスピードは非常に速いですが、今後求められるスキルや姿勢には、依然として共通する部分が多いと考えています。私が重要だと考えるポイントは、まず「お客様の意図をしっかりと汲み取る」ことです。単なるものづくりに終始するIT企業は、いずれ市場から淘汰されてしまうでしょう。
「お客様の意図を汲み取る」というのは、一見簡単なことのように感じるかもしれませんが、実際には非常に難しいことです。この課題を乗り越えるために大切なのは、いかにお客様との時間を大切にし、お客様のために動く姿勢を持つかです。もちろん、収益や自社の利益を考慮することも重要ですが、それよりもまず、お客様のニーズを最優先にし、そのためにどう行動するかをしっかりと見極めることが求められます。
求職活動における重要なアプローチ:経営者との直接対話の価値
現在、求職活動をされている方にお伝えしたいのは、経営者と直接対話する機会をぜひ持ってほしいということです。最近では、インターネットで情報を収集して満足してしまう方が多いように感じますが、実際にその人と向き合い、対話を通じて得られる感覚こそが重要です。自分の考えが変わるか、またはその考えを相手にどう伝えるかが大切なポイントです。ネットだけで完結させるのではなく、人と直接対話することで本質的な価値を見出すことができると思います。これは求職活動に限らず、人生のあらゆる場面において共通する考え方です。

株式会社SUNが提供するソリューション
社員との信頼関係を大切にした経営体制と柔軟な制度導入
当社はまだ100名規模の小さな会社ですが、その規模だからこそ、役員がそれぞれ異なる事業部を担当し、経営陣の思いや理念を社員に直接伝える体制を整えています。これにより、社員一人ひとりの意見や考えをしっかりと受け止め、密接な関係を築くことができています。この取り組みが、結果として社員の定着率向上にもつながっています。
当社のもう一つの特徴は、役員と社員の距離が非常に近いことです。役員は社員を大切に考え、細かな点にも気を配っている姿勢がはっきりと感じられます。企業理念である「人と人をつなぐ」というメッセージは社内に深く浸透しており、管理者もその理念をしっかりと伝えています。この一貫した姿勢が、社員に安心感を与え、信頼関係を築く土台となっています。
さらに、当社は柔軟な制度を積極的に導入しています。例えば、シックリーブ制度を海外基準に合わせて取り入れるなど、社員のニーズを制度に反映させています。こうした制度改革により、社員が自分の裁量で働ける環境を整え、優秀な人材が長く働き続けられる要因になっています。このような環境が、当社の成長を支える原動力だと感じています。
※1 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf
※2 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001486.000005089.html