「人と医療の架け橋」の理念のもと、医療機関と医師を、人材紹介サービスによって支える、株式会社Special Medicoの中曽根暁子社長にお話を伺いました。
株式会社Special Medico
代表取締役
中曽根暁子さん
銀行員や司会者を経て2012年「株式会社Special Medico」創業。予防医学や産業医紹介を通じて健康支援に取り組む。日本商工会議所・全国商工会議所女性会連合会第20回「女性起業家大賞」にて最優秀賞を受賞。週末は子育て中の母親向けのカウンセリングなどボランティア活動にも注力している。
弊社では、医療従事者、とりわけ予防医学の分野に精通したドクターを対象に、有料職業紹介を行なっています。
予防医学とは、病気になる前にそのリスクを減らし、健康を維持するための働きかけを行う分野で、人間ドックや健康診断などです。また、企業向け産業医の紹介も行っております。
私たちが事業を進める上で特に重視しているのは「包括的な観点から、その職場がその先生に合っているかを見極める」という点です。
例えば、企業の労働者の健康と安全を守るために、専門的な観点から指導や助言を行う産業医の場合、経営者の理念やビジョンにその医師がマッチしているかという点はさることながら、その企業にはどのような課題があり、どのような産業医を求めているのか、といった点を総合的に精査して、企業にとってはもちろん、医師にとっても、最適なマッチングをするように努めています。
弊社の特色として、同様のサービスを提供している同業他社と比べると、女性医師の登録数がはるかに多いことが挙げられます。これには、弊社が『がってせんせい』などの、女性医師に特化したサービスを数多く提供していることが関わっているものと思われます。
6000名超の女性医師が悩む 「キャリア形成の壁」
皆さんは、女性医師の多くが妊娠・出産、育児などにより、キャリアを一時中断せざるを得ない現状をご存知ですか?
日本医師会男女共同参画委員会 / 日本医師会女性医師支援センターが2018年に行った調査によると、休職の理由に「育児」を挙げた女性の割合は、常勤で44.3%、非常勤で53.7%でした。「出産」を理由に休職する女性医師はさらに多く、常勤で75%、非常勤で78%となっています。(※1)
また、女性に降りかかる困難はこれだけではありません。
同調査において「家事と仕事の両立」に悩んでいると回答した女性医師は、6000名を超えていました。(※2)例えば、子育てにおけるトラブル——子どもの急な発熱や、怪我など——のたびに、職場をあとにしなければならない罪悪感・責任感から、それまでのキャリアを手放してしまう女性医師は決して少なくありません。
弊社では、このような理由で職場復帰を諦めてしまう女性医師をひとりでも多く減らしたいという思いのもと、シッター制度やスポット勤務など、女性医師の働きやすさに特化した制度を、数多く取り揃えています。
弊社がそのような充実したサポートを提供するのには、「受診者」の存在があります。
というのも、医師の質は、受診者の健康を直接左右する要素だからです。特に、医師のコンディションが、受診者に与える影響は絶大なものだと言えるでしょう。そのため、弊社では、医師の方々がベストな状態で業務に取り組めるようサポートを行っています。
産業医の魅力とは?女性医師の新しいキャリアパス
また、先ほどお伝えしたとおり、弊社では登録いただいた医師の方に、産業医としても勤務していただいています。というのも、産業医は、それ自体が困難な状況に置かれている女性に適した雇用形態だからです。
産業医の業務内容は大きく、3つに分けることができます。
- 職場巡視 : 月に1回、企業を訪れて危険な箇所はないか、衛生面・作業環境に問題はないかを確認する
- 健康診断後の事後措置 : 社員の健康診断の結果をチェックするとともに、それに合わせた処置(作業の転換、労働時間の短縮など)を行う
- 保健指導 : 疲労の蓄積が認められる社員に対して、面談を行う(※3)
これらの業務の中には在宅で対応できるものもあり、長時間の勤務が難しい方や、毎日出社できない方でも、自分に合った方法で業務を進めることが可能です。
例えば、最初は5件の企業と契約し、状況に応じて契約する企業の数を増やしたり、オンラインクリニックで診療・診察を並行して行うなど、柔軟な働き方ができるのが産業医の魅力です。お子さんの成長やご自身のライフスタイルに合わせて働き方を調整することが可能です。
産業医としてのキャリアスタートには「基礎研修」が必須
しかし、産業医として働くためには、基礎研修会を受講し、所定の単位を取得する必要があります。研修は「前期研修」「実地研修」「後期研修」の3つのステップに分かれており、それぞれで必要となる単位の数は以下の通りです。
- 前期研修:14単位以上
- 基礎研修会 実地研修:10単位以上
- 後期研修:26単位以上 (※4)
つまり、産業医として働き始めるためには、研修を受け、およそ50もの単位を取得する必要があるのです。
そのため、産業医としてのキャリアを検討している方は、これらの研修を計画的に受講しておくことを強くお勧めします。
弊社では、これらの研修を受けていない先生からの相談も受け付けていますが、スムーズに転職活動を進めるためにも、早めに資料を取り寄せ、研修の申し込みを行っておくことが望ましいでしょう。
転職サイト・エージェントの活用法
近年では、弊社が提供するサービスのほかにも、医療に特化した転職サイトやエージェントが増えています。
ただ、私の考えとしては、医療業界は人脈、いわゆるコネクションが重視される業界です。そのため、こうしたサービスを利用するよりも、積極的に経験を積み、人脈を広げることに注力した方が効果的ではないでしょうか。
一方で、福利厚生や条件面の交渉を代行してもらえる点では、転職エージェントや大手の転職サイトも優れています。そのため、こういった交渉が不得意である・自信がないという方においては、これらのサイトを部分的に利用するのもひとつの手だと言えるでしょう。
休職中の不安を乗り越える!新しいキャリアを見つけるためのステップ
現在、休職をしている先生の中には、戸惑いを感じたり、不安を感じている方も少なくありません。私がそのような方にお伝えしたいのは「選択肢はむしろ広がっている」ということです。
たとえそれが、はじめに思い描いていたキャリアとは少し違っていても、スポット勤務や産業医としての経験は、これまでにはなかった知見を、あなたにもたらしてくれるでしょう。また、これらの体験を通じて得られるのは、何もナレッジだけではありません。人によっては、新たな生きがいや目標を見いだす方もいらっしゃいます。
例えば、産業医の業務を通じて、地域とのコネクションを形成し、復職後、それを頼りに、地域医療にシフトなさる方もいらっしゃいます。
弊社では、登録したことがプラスになる、そんな人材サービスを目指しています。現在、キャリアでお悩みの方が、弊社で培ったものを足がかりに、自分が生き生きと働ける場所を見つけられたら、これより嬉しいことはありません。
※1 https://www.med.or.jp/joseiishi/wp-content/uploads/2018/10/h29wd_survey_cross.pdf
※2 同上
※3 https://doctor-trust.co.jp/sangyoui/service/sangyoui_sennin.html