【株式会社ラントレ社長】Z世代におけるエシカルとキャリアの未来予想図

2020年8月に「エシカルでカッコいい世界」を実現するために「株式会社ラントレ」を設立した塗野直透様にお話を伺いました。

塗野様は、大学在学中に起業し、法人向けにSDGs施策の戦略コンサルやエシカルな商品の開発の2軸で活動を開始します。

「エシカルクール」を世の中に浸透させるべく、日々精力的に活動されています。

SDGsや持続可能な社会の実現において、学生・企業両方の観点からお話しいただきました。

株式会社ラントレ
代表取締役
塗野 直透さん

大阪府出身。近畿大学経営学部卒業。株式会社ラントレの代表取締役。”ETHICAL COOL ” -エシカルがカッコいい世界を創出する- をキャッチコピーとして掲げ、エシカルブランディングサービスを展開。全国からエシカルの活動をしている若者が集まる、日本最大級のエシカルの祭典「エシカルエキスポ」の企画運営も行う。

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エシカル×Z世代に特化したエシカルクリエイティブカンパニー

「いいものを買って、それを使い続けなさい」ということを教えてくれた養父の影響で、ものを大切にすることが自然と身につきました。

その中で「エシカル」という言葉と出会い、この価値観をもっと多くの人に知ってもらいたいと思いました。

「エシカル」とは、より広い視野で、「人や社会、地域、環境などに優しいモノ」を購入する消費行動やライフスタイルのことです。

そこで、エシカルが当たり前の世界を創るために、まずはエシカルがカッコいい文化を創ろうと考え、「エシカルクール」というキャッチワードを掲げて、学生時代に現在の会社を起業しました。

「エシカル」を広めることに特化した3つの事業展開

現在の主軸事業は以下の3つです。

1 プラットフォーム事業

社会課題解決に取り組むZ世代(社会起業家・環境活動家・学生団体)と企業が集うプラットフォーム「全国エシカル連盟」を運営。理念や志、創りたい世界観がマッチしそうな個人、団体、法人同士をマッチングできるよう、日々コミュニケーターがサポートする。

2 プロジェクトのマネジメントの事業

プラットフォームを通じてマッチした“共創”プロジェクトをサポートするマネジメントサービスを展開。Z世代とのコラボワークショップ開催や、商品開発、SNSの運用設計など。

3 イベント制作事業

Z世代から個人、団体まで、エシカルという考え方について共感できるメンバーとディスカッションや交流ができるイベントの開催。「エシ活」というオンラインのディスカッションイベントや、「エシカルパーティー」という、法人と若手のプレイヤーたちが混ざり合うような交流会など。

そしてこの3つの事業ドメインを一気通貫で共創循環しているのが、弊社が運営主催する「エシカルエキスポ」という、Z世代が連携して創る日本最大級のエシカルの祭典になります。

実は「エシカル」に感度が高いZ世代

Z世代とは、1995年から2010年生まれの人たちで、下は13歳から上は28歳まで。すでにマーケットの中心層になりつつあるこの年齢層は、実は「エシカル」を指向している人たちが多いと言われています。その理由は大きく分けて3つあります。

1つ目は、昔よりも世界が豊かになったことです。物や情報に溢れ、何でも手に入る時代になってしまったがゆえに、自分が何かを選択する際、「この商品を使ってどうなるのか」「こういう行動をして自分以外がどうなるのか」といった判断基準がZ世代に醸成されたのだと思います。

2つ目は、小学校の頃からカーボンニュートラルやフェアトレードの教育をするようになり、今のZ世代が潜在的にそれらに興味があることが多いです。

3つ目はSNSの発達です。今ではアメリカのトレンドは日本全国どこの高校生でも、SNSを通じて瞬時にキャッチアップできます。同じように戦争や環境破壊、貧困といった世界で起こっている問題をSNSでキャッチアップし、自ら興味を持って課題意識を向けられる若者が増えたことが大きいです。

Z世代の中で結果を出すにはコミット力と責任感が必要

どの時代においても結果にコミットする人が出世すると考えています。

Z世代は、良くも悪くも多様性を重視していて、熱い志があるというよりは、考え方がふわっとしている人たちが多く、コミット力が弱い傾向にあると感じます。

怒られた経験がない人たちも多いので、将来、自分が会社で上の立場になったときに、部下への怒り方が分からずに悩む人も増えるでしょう。

今のZ世代は「ソーシャルSNSネイティブ」ともてはやされていますが、10〜20年後には、次はAIネイティブになった下のα世代にどんどん追い越されていき、気づいたときには「何者にもなれていない」というZ世代が蔓延してしまいます。

そうならないためにも、若手のうちから1つ1つの仕事にコミットして、責任感をもってやり遂げる習慣をつけて欲しいですね。

就職マッチングサイトやイベントを活用するポイント2つ

1つ目はエシカルをテーマにした展示会に足を運んで、色々な企業を見てまわるのが良いと思います。「どのような技術を持って、どんな社会課題に取り組んでるのか」を直接聞けるからです。

2つ目は、サステナビリティ(環境や経済等に配慮した活動を行うことで、社会全体を長期的に持続させていこうという考え方)や、ソーシャルビジネス(様々な社会的問題を市場としてとらえ、それらを解決する事業)をテーマとした就職マッチングサイトに登録したり、イベントに参加することです。

エシカルエキスポでは、企業とZ世代がプロジェクトを通して一緒にブースを出展する企画があります。そこでは、社員がどんな志を持ってどのような取り組みをしているかを半年間伴走しながら聞くことができます。

私たちは同じ志を持った企業と学生をマッチングしながらプロジェクトを組もうと意識しています。結果としてこの企画が学生のインターンや採用に繋がることも多いので、今後も継続していきたいですね。

社会課題解決に取り組んだ経験が就職で有利になる

学生時代に何かしらの社会課題に対して、自分でアンテナを張りながら主体的に動いたエピソードが挙げられると就職活動に有利だと思います。たとえば貧困や教育、環境、ジェンダー問題などの社会課題です。

また、実際に就職してからは、社会課題への問題発見能力や、0から1を作る立ち上げ力が求められます。エシカルに取り組んでいる企業は、たとえ大手企業であっても社内起業のように、小さな新規事業部で回しているケースが多いからです。

私の周りには、環境工学や都市工学といった、社会課題解決を目指して勉強したり、実際に行動を起こしている学生が多いです。彼らが志が同じ企業とうまくマッチングできれば、それらの経験を活かしながら活躍できると思います。

経営理念をZ世代に響く表現に変えると採用で有利に働く

経営理念は、若い世代に分かりやすい方が採用で有利に働くケースがあります。

学生目線で考えると、企業の理念やビジョンが直感的に理解できる方が安心感があります。

そのため

たとえばエシカルエキスポでは、学生と一緒に「この理念ってZ世代風に言うとどんな表現になる?」といったことを一緒に考えます。

その中で課題の提議や、どのような商材を使って、どのような世界に持っていくかを考えることは、半年に1回や年に1回はやってみるのが良いと思います。

アピールすべきは自社の志や理念に基づいた取り組み

特定のテーマが求職者に刺さりやすいというのはあまりないと思います。それよりも、創業者の思いや、どんな世界を目指しているか、自社の理念にどれだけ基づいた取り組みになっているか、をアピールすることが重要です。

ただ「SDGsのこんな取り組みをしています」という活動報告では意味がないですし、それらはむしろ、ミスブランディングに繋がりかねません。

現代は、SNSを通じて情報が狭くなっている、つまり世界全体が狭くなっているので、良い情報も悪い情報もすぐに拡散されてしまいます。

見せかけだけの活動はすぐにバレて広まってしまうので、自社の志や理念をきちんとアピールして、それに共感する人にだけ刺されば良いと思います。

対社員への認知を最優先すれば社外に伝わっていく

1番分かりやすいのはサステナビリティ委員会や、サービス推進室といった部署を立ち上げることです。

対社内と対社外では、まず対社内を優先しなければなりません。どれだけ対外的にうまく見せても、社員に「見せかけだけだ」「うちの会社はなにもやってない」と思われたら意味がないですよね。

その為にも、まずは社員に自社の取り組みを知ってもらい、彼らが「社会問題に対して自社はこれだけの思いを持って活動してるんだ」という認識を持てれば、結果的に社外にもそういう雰囲気が伝わっていくと思います。

実は組織強化に繋がるエシカル感度が高い人材の採用

企業側はエシカルに関心がある人材が欲しいというより、即戦力やスキルを重要視する傾向にあります。そういった現状も含めて、やはり企業側から考え方を変えていくことが求められると思います。

もちろんスキルや経験も重要ではありますが、「エシカル的なマインドを持っている人たちが少しずつ増えて、理念の共感性や目指す社会像、社会課題の定義を重要視するようになり、組織が強く固まる」という概念が、企業に浸透していくことが望ましいですね。

会社組織を作っているのは1人1人の集まりです。もちろん上層部や経営層が、経営方針や中長期経営計画を策定しますが、その中に社会課題に対しての意識が高い若い世代が集まれば、ビジネスで社会課題を解決する組織がどんどん生まれていくと思います。

エシカルな就職・転職の課題は企業側の体制未整備にある

1番の課題は、エシカルに取り組む企業は、日本の中ではマーケットとして大きくないため、エシカルに関心がある人材を必要としてない点です。また、エシカルを軸にした事業で儲かっている会社は少ないこともあり、社員を採用するだけの体力がないなど、企業側の環境が整っていないことが課題として大きいと感じます。

「イミ消費」における採用活動 では共感を呼ぶのが大事

マーケティングにおいて、機能性やデザイン性の「モノ消費」があり、体験性を重要視する「コト消費」があり、社会的な意義がどこにあるかという「イミ消費」があります。

採用も同じで、就職希望者が企業情報を取る手段も増えている中で、その企業に就職する上での社会的な意味や、自分にとっての働く意味を求める時代になっています。

そのため就活生に対する訴求方法として、「給与が多い」「福利厚生がいい」というよりも「自社がどのような世界線を目指し、どのような志があって、具体的にどのような課題を提議して、どのような取り組みをしているか」を訴える方が大切です。

給料や福利厚生への希望はライフステージによって変化する可能性がありますが、自分の志は基本的に外部環境に左右されないので、ブレることがありません。就職先の企業と自分の志がしっかりマッチしていれば、離職率は下がり、仕事のパフォーマンス向上にも繋がります。

プラットフォームの構築で事業継承が循環する仕組みを創る

まずは農業事業の拡大です。実際に今、福井県高浜町で畑を維持管理しているのですが、それは都市部の若手ベンチャー企業が、地方にサテライトオフィスを持つことで、仕事の合間に畑作業をして、ワーケーションやリラクゼーションができる場所を作りたいからです。

今後も農業事業を広げ、いずれは農地問題も解決していきたいです。

私たちがエシカルエキスポやコミュニティプラットフォームをやっている理由は、地方にある優良企業の後継者不足と若手のプレイヤーたちをマッチングして、M&Aのように事業承継をしたいと考えているからです。

たとえば80歳のおじいちゃんたちが作る伝統的なお茶碗など、後世に残したい事業をどんどん受け継いでいくような循環を創りだしていきたいです。

そのためにも、優秀な人材や志の強い人たちが集まるプラットフォームとイベントの場を構築して、新たな若手プレイヤーたちと企業の出会いの場を創出していきます。

「社会課題を自分事として捉える人は優秀」という認識変容を目指す

僕らがやっているプラットフォームの中でも、学歴やエシカルへの感度が高い子たちは、社会課題に対して主体的に行動していたり、自分事として捉えることができるので、どの企業も欲しがる優秀人材です。

企業が彼らと同じような志を持っていれば、彼らの離職率低減にも繋がると考えているので、双方のマッチングを今後もっと強めていきたいですし、「様々な社会課題を自分事として捉える人たちは優秀」という認識を、社会の共通認識にしたいです。

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