
株式会社グリーンハート
代表
尾都野信子さん
医学博士・リウマチ専門医・内科医。自身の体調改善経験から、ホリスティック栄養学と未病ケアに注力。
米国NTI認定栄養コンサルタントとして、オリゴスキャンを活用した体内栄養バランスの改善を提唱。
ミネラルヘルス®の普及、専門家育成、エビデンス構築支援、商品開発に取り組み、週2日は女性の健康を支える外来診療を行う。
グリーンハートの始まり

不調の原因はミネラルバランスの崩れだった
グリーンハートの始まりは、循環器の医師が約40年前に患者さんの診察を通して気づいたことがきっかけでした。近隣のクリニックを受診しても悩みが解決しない患者さんが、当時開業したばかりのその医師を受診したそうです。
採血やレントゲンなどでは何も問題がないにもかかわらず、体調不良が始まったということで、常用していたサプリメントの成分や過去の論文などを詳しく調べていくと、現在は許可されていない危険なミネラルを含む成分がその不調に繋がっていたということが分かったんです。
世界中のミネラルに関する様々な研究から、ミネラルは、大きく分けて生きていくのに必要なミネラルと有害ミネラルの2つに分類されますが、必要なミネラルも過剰になったりバランスが崩れたりすると、不調のきっかけになることがわかってきました。また有害ミネラルも、科学の発達により知らず知らずのうちに大気汚染や加工食品などから体内に蓄積しやすくなります。
一方、必要なミネラルが不足すると体内に蓄積した有害ミネラルをデトックスしにくくなります。その当時ミネラルについて、詳細に知ってる方はいなかったのですが、そもそも診断がつかないのに体調が悪いという状態は、ミネラルバランスを整えることで改善するのではないか、と考えたのがグリーンハート立ち上げのきっかけでした。
ミネラルヘルスという概念
その当時、フランスでミネラル療法の第一人者の先生に会う機会があり、ミネラル含有液で様々な症状が改善するお話を聞く機会があり、更にミネラルの重要性を感じました。しかし患者様の症状からミネラル不足を推測してミネラル含有液を投与する、というのが当時の方法で、体内のミネラルバランスを可視化できるツールはありませんでした。
その後、体内のミネラルバランスを簡単に測定できるオリゴスキャンという機器が日本に入ってきて、さっそく購入していろいろ不調のある方を測定してみると、やはりミネラルバランスが大きく崩れていたのです。
ミネラル療法をすでに行っていた先生や、オリゴスキャンとの出会いを通して、ミネラルバランスを調えることの重要性を強く認識し、私たちは「ミネラルヘルス」という言葉で普及啓発をはじめました。未病ケア「ミネラルヘルス」を基軸として、地域社会や職域、女性健幸といったところに貢献できるようなサポートをしていきたいというのが、私たちの会社の活動です。
ミネラルヘルスという言葉は、あまり聞き慣れないかもしれません。もしくは、ミネラルヘルスという単語自体は知っていても、具体的な取り組みについては初耳だという方もいるかもしれません。
私たちはミネラルヘルスの普及、啓発の活動を地道に行っています。今回インタビューをお受けしたのも、ミネラルヘルスをもっと発信していきたいという思いと、ミネラルヘルスを基軸とした未病ケアなどの活動を広めていきたいという思いがあったからです。
ミネラルヘルスの活用
ミネラルバランスが崩れると未病状態に
現代人は非常に多くの方がミネラルバランスを崩しているというデータが、厚生労働省からも発表されております。特にカルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウムといったミネラルが不足している人が多いのですが、カルシウム不足は小学校の給食でカルシウムを補強するメニューが出るほど昔から言われているのに、未だに足りていません。
現実に不足されている方が多い亜鉛は特に300以上の酵素反応に必要で、不足は味覚異常だけでなく、妊娠基礎力や「切れやすい」・「ストレス耐性の低下」や女性特有の健康課題「月経関連の症状」・「更年期」などにも影響することがわかってきています。
それ以外にも、ミネラルバランスの崩れが、原因がはっきりしない様々な症状に影響している場合もあります。我々はミネラルバランスが崩れた状態を未病状態と定義しており、ミネラルバランスを調えやすくする未病ケア【ミネラルヘルス】を、我々の研究や海外論文などから得た科学的に正しい知識を使って、職域のメンタルヘルスや女性の健康活動に役立てていただきたいと考えています。
ミネラルバランスを調えるためのサービス
消化吸収のちがいに着目
ではなぜ、多くの方が栄養失調でもないのに、あるいは太っていてもミネラルバランスが崩れているのか?に着目しました。これらの状態を新型栄養失調と早い時期から分類し、原因を考えることで、ホリスティキュア酵素体質チェックが生まれました。
酵素体質チェックは、食嗜好や遺伝的体質から酵素の体質に違いがあるという考え方です。酵素は消化・吸収・代謝に必須のものです。私たちが学んだ NTI(Nutrition Therapy Institute)でも、2万人以上のデータから体型と消化吸収の違い4タイプに分類したものを「ボディタイプ」と命名していましたが、我々は同じような考え方に、エゴグラムや色彩心理学の考え方などを取り入れ15タイプに分類しました。これが「ホリスティキュア酵素体質チェック」です。
つまり、単に足りないミネラルを含む食材を足すのでなく、酵素体質によって、例えば有害ミネラルが蓄積しやすくなるタイプ、たんぱく質が消化吸収しにくくなるタイプなどを判断することで、その方の体質に合わせて消化吸収を改善するような食事アドバイスをすることが大事なのです。
我々の研究でも、酵素体質チェックのアドバイスをほとんど守らなかった方よりも週のうち半分以上守った方のほうが、様々な血液検査による健康指標やミネラルバランスの改善が良いという結果を得ています。
個別最適な食育を実現する「ホリスティキュア酵素体質チェック」

今までの健康増進のための食事アドバイスは、1日に必要なカロリー、タンパク質は何g程度にした方がいいとか、食物繊維は何g摂りましょうという画一的なものでした。もちろんこういうアドバイスも大切なのですが、私たちは、さらに踏み込んで、ミネラルバランスを調いやすくする「個別最適性」の食育をするための「ホリスティキュア酵素体質チェック」という、食嗜好から消化吸収の体質を分類するメソッドを立ち上げたのです。
直営の栄養ケアスタンドでは、この酵素体質チェックという手法と、体内のミネラルのバランスをチェックするための測定機器「オリゴスキャン」や、ミネラルバランスの崩れによって起こりやすい「糖化度」を測定する機器をベースに、食事アドバイスなどのサポートを実際に行っています。
アプリ開発と今後の展開
この酵素体質チェックをより多くの方に活用していただきたいと考え、大きな開発費はかかりましたが、アプリ化することに成功し、2024年12月にプレスリリースしました。アプリの開発で、今までで対面でしかできず、問診やその後の栄養アドバイスなどに約1時間前後を必要としていた食育アドバイスを、だれでも簡単に実施してもらえるようになりました。
このアプリは、メソッドの基礎となった複数の臨床試験データの信頼性などが評価され、2025年3月に開催された未病テックコンテストで未病ケア商品として認定されています。未病ケアに関心の高い方々や、ヘルスケア関連企業、健康経営に関心の高い企業、あるいは自治体を通して地域住民の未病ケアのために、そしてミネラルヘルスを一緒に広める仲間であるミネラルヘルスコーチ「プロ」に活用していただけたらと思っています。
『酵素体質チェック』は、アプリダウンドード後、自身の食生活や体調など一時問診43問、二次問診3問から構成されています。質問に正しく答えていくことで、アルゴリズム上は、最終的な判定不可能は数パーセントとなっています。
自治体や企業・ミネラルヘルスコーチ「プロ」など、複数人数の実施が可能なBtoB向けサービスとして始める予定です。
また、食育アドバイス以外にも独自の「心の健康チェック」や我々の研究から導き出した、妊活者のためのミネラルアドバイスも確認できるようになっています。
医師を目指したきっかけ
人の心に寄り添う仕事がしたかった
元々は臨床心理士さんのような仕事をしたいと考えていました。人の悩みに寄り添うような仕事がしたかったんです。
でも、色々調べていくうちに、メンタル、つまり心の問題だけでなく、心と体は密接に繋がっているので、どちらもできるような仕事だったらより良いと思い、最終的に医学部を目指すことにしました。
家庭環境が割と医療従事者が多かったことも影響していると思います。悩みに寄り添うとか、話を聞くといった仕事がしたいと思っていました。
なぜそう思っていたのかははっきりとは分かりませんが、どちらかといえば、自分から発信するタイプというより、人に頼られることで自分が生きる、といったキャラクターだったのだと思います。
医学部時代とキャリアの転機
当時、私は本当に夜型だったので、学校に行く時間帯はいつも眠くて眠くて。夜型の生活を送りながら学校に通い、不規則な生活をしていく中で体調を崩したことがきっかけで、生活習慣や環境というものを見直すべきだと強く思ったんです。
それが今の仕事に繋がるきっかけとなりました。
研修が終わって医局に入局してから、学会の展示ブースで、建物で体内のミネラルバランスを測定できるという機会を体験する機会がありました。実際にやってみたら、ものすごくバランスがめちゃくちゃで。
各ミネラルがどういう意味を持つのかなどを調べていった時に、当時感じていた自分の不調というのが、もしかしてこれが原因だったのかな、と腑に落ちる瞬間がありました。
ミネラルバランスを整えるというメソッドを試してみた結果、自分にうまくはまったのです。実際に体感して効果があったので、確信に変わっていきました。
グリーンハートとの繋がりと改善事例
創設者である母から繋いだバトン
グリーンハートの創設者は私の母なんです。そもそも母が開業当初に、サプリメントでの有害事象の症例を診断したことがきっかけで、母なりにミネラルについて知識を深めていきました。その中で、体内にあるバランスを測定できる機械を、地元でいち早く導入したもの母でした。
断片的には母の話を耳にはしていましたが、当時、私は大学病院で膠原病内科医として働いており、あまり未病というところに意識が向いていませんでした。
ただ、膠原病の患者さんのデータは落ち着いているのに、だるいとかしんどいとか、頭が痛いとか、肩が凝るとか、お腹の調子が悪いとか、そういった症状を訴える人が割と多くて。
よく考えたら、自分自身も普通に仕事はできていると思っていたけれど、よくよく自分の体調、コンディションに耳を傾けてみると、調子の悪いところが色々あるなと感じていました。
そんな時、たまたま行った学会の展示場で、そのミネラルバランスを測定する機械を見かけたので、ちょっと自分も試してみようかなと思ったら、かなり派手な乱れ方をしていて…。
そこから自分なりにそのミネラルについて学んでいったという感じです。
思ったよりそのミネラルというのが想定外に私の体に悪影響を及ぼす変数になっていたということなのだと思います。
改善事例
ミネラルヘルスを実行するときに、自然派のマルチミネラルサプリメントとして、広島産の牡蠣から特殊技術で開発されたサプリメントと、酵素体質チェックによる体質に沿ったアドバイスを併用することが多いのです。その結果、以下のような健康効果が出ています。
- 「職場に行けなかったのが、職場復帰が何とかできるようになりました」という方
- 「睡眠が改善して仕事のパフォーマンスが上がりました」という方
- 「妊娠が難しいと言われた方の妊娠例」など
我々の複数の臨床研究でも、糖化改善や、睡眠の質の改善、その他さまざまな健康効果がでております。
先ほどお話しました自然派マルチミネラルサプリメントは、サプリメント開発時に連携している医療法人が安全性や効果の研究に携わったものですが、牡蠣って亜鉛をはじめとして、ミネラルがすごく豊富な食材なんですよね。特殊な製法で作られており、ミネラルと必須アミノ酸が多いのが特徴です。

都内展開とエビデンスの重要性

都内のケアスタンドでは、ミネラルの専門家ミネラルヘルスコーチ「プロ」によるミネラルチェックと相談が可能です。
都内進出の理由は、ミネラルヘルス、つまりミネラルの未病ケアにおける重要性を普及啓発するためです。都内進出後、ウェルネスツアーへのミネラルヘルス導入やアワード参加の機会を得ました。
私と母は医師であり、エビデンスを重視しています。ヘルスケアやウェルネスは体とメンタルに影響するため、エビデンスは不可欠です。消費者が正しい知識で自分に合うものを選べるように、エビデンスに基づいた商品開発が必要だと考えています。
弊社が開発に携わった広島県産の牡蠣を使ったサプリメントは、未病総合研究所(未病学会を創設した医師が新たに設立した機関)において、商品のエビデンスや安全性が審査された結果、未病ケア商品に認定されました。また、同サプリはおもてなしセレクションも受賞しています。
これらの活動を通して、少しずつミネラルの重要性を広めていきたいと思っています。