【弘前大学教授】健康で幸せに過ごせるWell-being社会へ導くことが課題解決の糸口に

文部科学省の採択を受けて「10年先の未来を見据えた健康プロジェクト」を実施する弘前大学健康未来イノベーション研究機構。

産官学連携の成功事例として、自治体、企業、団体から一目置かれる存在であり、かつ予防医療を牽引されてこられた弘前大学学長特別補佐/健康未来イノベーション研究機構長・教授の村下公一先生に、「ヘルスケア業界」の視点から、今後求められる人材や課題解決の糸口、若者のキャリア形成などについて、幅広く伺います。

弘前大学
村下公一先生

青森県庁、ソニー、東京大学フェローなどを経て、2014年より現職。弘前大学COI拠点では副拠点長(戦略統括)として産学連携マネジメントを統括。COI-NEXTでは拠点長(PL)として全体を統括。文部科学省ほか政府系委員など多数。専門は地域産業政策論、社会医学。

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1人でも多くの方が健康に過ごせる「健康長寿社会実現」

日本では病気になった人を治療し1日でも早く回復させるという部分に力点を置いてきました。でも、その対応では高額な医療費が増える一方のため、国の財政が維持できません。

弘前大学がある青森県は平均寿命が全国最下位、ワースト付近には同県の市町村が軒並み続くという記録を持っています。男女共日本一の短命県から脱却するべく、スタートしたのが「岩木健康増進プロジェクト」です。

このプロジェクトによって集められた健康ビッグデータの解明に向けて、あらゆる企業、各大学、地域の特徴・強みなどを活かした強力なマルチ連携体制を構築し、人々が豊かになるため、新たな産業が生まれ、地域全体がパワーアップするような循環型の社会を目指しています。

ヘルスケア業界で求められるのは、イノベーティブな発想

ヘルスケア業界において求められる人材は、「社会課題の解決に関心のある人」ではないでしょうか。通常、医療分野では医療資格を持った人を想像するかと思います。もちろん、そういった医療について学んだ人も重要です。でも、病気にならない社会を目指すヘルスケアでは、AIデータを駆使したり、農学を専攻した方が「食」をテーマに健康や予防に関するアイデアを考案したりするなど、興味のある多様な分野から健康に関する活動をされる人が活躍しています。

また、まだまだ健康意識が低いといわれる若者をターゲットにした取り組みに、各企業が力を入れています。例えば、美容業界では男性の化粧品が開発されたり、身体を内側から整える「インナービューティー」の考え方を広めるなど、さまざまな切り口で若者が健康に関心を持てるような流れを作っているようです。

私はさまざまな人同士が融合することによって多様性が生まれ、誰も思いつかなかったイノベーティブな発想が生まれると考えます。健康改善を考えたとき、食事・運動・睡眠の3つは切っても切り離せないほど重要であり、それらを基にしたビジネスが展開されてきました。今後も新たな切り口で、健康へアプローチする業界が増えていくのではないかと見通しています。

「健康」に紐づけたビジネス展開も可能

村下公一先生
引用:DIAMOND online

データの領域も当然ながら、需要が拡大する業界として、アプリやゲームの開発などが挙げられ、これらの業界も健康に紐づく分野ではないでしょうか。例えば、ポケモンGOは健康のために発明されたアプリはありませんでしたが、お目当てのポケモンを探しに町に繰り出すことにより結果的に運動量が増え健康に繋がりました。このように何か別の目的で開発されたものも健康グッズになり得ます。

どんどん技術が進化し、身に着けるデバイスも時計や指輪などに姿形を変え展開されています。ゲームやアプリについてもさまざまな角度から健康と連携させることで、さらに面白いビジネスが生まれていく可能性を感じます。

健康に過ごせる社会へ導くことが課題解決の糸口に

村下公一先生
引用:日経XTECH

ヘルスケア業界の需要が高まる一方で、社会課題に目を向けることも必要でしょう。現状、少子高齢化やそれに伴い生じる高額な社会保険料を少ない若者世代が負担し支えるという未来を避けることは難しい。しかし、健康な身体づくりを目指すことで医療費を減らすことにも貢献できます。

ヘルスケアの領域で取り組めることとしては、革新的な技術を発明し健康に過ごせる社会へ導くことです。そうすれば人々のQOLが向上し、社会課題の解決に対して積極的な見方を示し、社会保障費の問題についても解決の糸口が見えてくると考えています。

健康に重きを置くことは、自身のためだけでなくキャリア形成にも役立ちます。

健康維持こそキャリア形成の要

「健康経営」という言葉があります。これは従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することを意味する言葉です。従業員の健康度が高いほど、組織の生産性が高いという結果が明らかになりました。

ということは、経営側にも従業員の健康の保障という視点での取り組みが求められてくるということです。その一方で、就職活動やキャリアステップを踏む若者にとっても、「健康」が大事なキャリアを決める上での判断要素になっていくでしょう。

今でこそ健康について研究を行っている立場ですが、学生時代に取り組んできた分野が、社会人になってそのまま直接的に活かされたわけではありません。

皆さんもこれから、さまざまなことに挑戦していくことと思いますが、どうか最初から「自分をこうだ」と決めつけずに、いろいろな道を歩んで、多様な経験(体験)を積み重ねて欲しいと思います。

そのためにも資本である自分自身の身体をケアし、健康への意識も今より高めてほしいですね。それが、未来の自分の可能性をさらに広げていくことにもきっと役立つと思いますよ。

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