【一般社団法人保険健全化推進機構結心会会長】AIに代替されない保険ショップを経営する真髄とは

2008年に保険ビジネスの健全化を推進するための「結心会」を設立した上野直昭様にお話を伺いました。

上野様は、新卒で⽇本⽕災海上保険株式会社(現損保ジャパン)に入社し保険業界一筋でキャリアを積まれました。

「代理店が変われば、マーケットが変わる」というスローガンのもと、保険健全化推進機構 結心会を主宰されております。

保険業界において、AIが台頭するなかでも、保険代理店に求められる人物像やスキルについて豊富なご経験に基づいてお話しいただきました。

一般社団法人保険健全化推進機構結心会
会長
上野 直昭さん

上智⼤学法学部を卒業。損害保険会社へ入社以来、保険業界一筋。2008年に株式会社アドバンスクリエイト退社し、2009年2月に結⼼会を設⽴。2010年の7月に結⼼会を⼀般社団法⼈化し代表理事に就任。日々進化する「保険」を面白く理解しやすく情報を発信。また、ネクタイ4000本を有し、ネクタイを使った独特な営業手法、保険ショップを一般化させた店舗展開手法などの公演も行う。3大疾病の心疾患やがんを患うも回復し、現在は「ネクタイ派手夫」としてYoutuberとしても活動中。

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保険の営業マンに「思いやり」があればAIに負けない

私は代表として、北海道から沖縄までの保険代理店の集合体である結心会という会を主宰しています。

結心会の会員に「保険って何?」と聞かれたら、「愛」と答えます。

保険は「子どもの将来に不安がないようにしたい」など、目的があって入るものです。

そのため保険料を考慮しながら一緒にライフプランを作り、各自にとって最適な保険を組み合わせて契約していただきます。

お客様のライフプランを組み立てる上で一番大切なことは、テクニックや商品を覚えることよりも、お客様や地域に対する優しさ、思いやりが重要だと思っています。

「思いやり」はAIやDXには提供できない、人しか出せない価値でしょう。

保険ショップに来る人は「寄り添ってほしい人」

お客様が結果的に選ぶのは、スキルやテクニックではなく、一番話を聞いてくれる保険ショップです。

数多い保険の中から契約する際に「寄り添って一緒に考えてくれる保険ショップ」と出会えるかだと思います。

日本の大手保険会社は、株式会社ではなく相互会社であり、相互扶助です。

日本は「助け合い精神」が鎌倉時代から脈々と続いてる印象があるので、それがDNAの中に入っていると思います。

そのDNAに応えられるだけの思いやりや優しさが感じられると、その人の紹介する保険に入りたくなるのではないかと感じています。

保険業界で働くならファイナンシャルプランナーの資格があると有利

ライフプランを組み立てながらお金回り全般を勉強するファイナンシャルプランナーの資格はあった方がいいと思います。

異業種の面白い発想を活かしたいので、保険業界の経験はむしろいらないと思います。

また、保険ショップは集客がスタートなので、小売業・サービス業にいた人を積極的に採用しています。

しかし訪問販売系の代理店に関してはメンタルが強くないといけないので、保険業界でなくとも、営業職を経験していないと難しいと思います。

保険の営業職になるなら「人」を好きになろう

人を相手にしてるため大前提として「人が好き」でないと難しいお仕事だと思います。

たとえば、一つの契約に対して複数枚の申込書が必要なので、常に多くのお客様の情報を頭の中に残しておかなければならないです。

また、お客様に「いつも気にかけてくれている」と感じてもらう必要があるため、マメでおせっかいな人が向いていると思います。

保険ショップは傾向的に女性の方が多いです。

ただし保険の訪問販売で言うと、営業職の男女比は保険会社の方針次第ですね。

営業未経験の人のほうが保険ショップに向いている

保険ショップで言うと、今まで保険営業を経験していた人は採用しません。

あくまでショップなので、保険代理店ではなくて小売業であって、サービス業だと思っています。

結心会を設立して20年ほど経ちますが、保険ショップで共通して最初に行ったのは「保険ショップで保険を売らない」ということです。

保険ショップは「悩み事、困り事を聞く場所、コミュニケーションを取る場所」にしていきたいと考えています。

お客様との会話の中で「生活する上で今何が心配か」を聞いた中の解決策の一つが保険に過ぎません。

自分の家族のように心配して、悩みや困り事を聞いて共感しながら、一緒に解決策を考えていくということが、保険の人に求められるスキルなのかなと思います。

「ありがとう」と言ってもらえるお仕事

日本の大手保険会社は、加入者が亡くなった時に遺族に保険金をお支払いして初めて「ありがとう」といわれるものです。

よくある例として、30代のお父さんから生命保険のご契約があって、そのまま30年〜50年一生懸命働いて、家族を養ったあとに亡くなるケースがあります。

死亡保険に加入していれば必ずいつか保険金を受け取ることができるため、奥様がお金を受け取ってくれて「ありがとう」と言われます。

お話した事例は、何十年の間お客さんに寄り添うといった時間軸のため、「長くその人のために連れ添ってあげたい」とか「寄り添ってあげたい」みたいな心構えが大切です。

繰り返しになりますが、一言でいうと「保険は愛」と読者の皆さんには伝えたいです。

思いやりを身につけるならボランティアの経験がおすすめ

思いやりを身につけたいなら、感謝を体で感じるのが一番簡単だと思います。

たとえば自然災害の復興支援で、保険の営業マンが手伝うことによって、皆さんに地震保険のありがたさを感じてもらいながら、現地の方達から感謝の気持ちを伝えられるケースがありありました。

保険をプランニングして、「ありがとう」と言ってもらえることが我々の業界の唯一の楽しみだと感じます。

「ありがとう」を聞くために、ボランティアに積極的に参加して一緒に苦労する経験が大切です。

その「感謝の気持ち」をいかに自分の中に積み上げていけるかが、思いやりにつながると思います。

保険の代理店は井戸端会議の「井戸」になれ

保険代理店は、地域に馴染みながら地域に貢献できる存在であるべきだと思います。

現代では井戸端会議のようなコミュニティがなくなってきているので、その井戸端会議代わりに保険ショップに来てもらいたいです。

ショップの中で日頃の悩みや世間話をしてもらうと、話の中からアイデアが湧いてくるという事例があります。

一方で、昔は保険代理店が常に地域の情報をマッチングして地域を支え、結果的に顧客を獲得していた時代がありました。

代理店が町中を駆け回り、地域の人々とコミュニケーションをとることで、地域全体のコミュニティが活性化していきました。

現代ではカスタマーハラスメントなども横行しており、代理店も地域で孤立している人とのコミュニケーションが取りづらくなっています。

そういう意味では、昔は保険代理店が地域の潤滑油になっていたと思います。

お客さんにウィッグをプレゼントしたエピソード

保険ショップに来店したお客さんから、「友人が乳がんで入院しているが、本人に断られてお見舞いに行けないのがつらい」という相談を受けたことがあります。

そのご友人は、抗がん剤の影響で髪が抜け、痩せ細った体を見せたくなかったのだと思います。

せめて髪はなんとかしてあげたいと、色々なウィッグ販売店に電話で相談したところ、「病室に行ってウィッグを作れますよ」という所がありました。

30万円ぐらいかかるので、お客さんに「高いけれど、1万円払える人を30人集めていただければ実現できると思います」と伝えたら、本当に30人集めてくれて実現したんですよ。

そして、30人の名前を書いた紙とウィッグをプレゼントして、「辛いとは思いますが、協力してくれた方々に連絡を取ってみてはいかがですか?」と伝言してもらいました。

結果的に、そのご友人は回復して、退院が早まったそうです。

「こんなに応援してくれてる人がいるんだと思ったら元気になった」みたいな感じで。

病気になった時の備えとして保険を売っていますが、そこから派生して元気になってもらえたら一番ありがたいです。

そういうところも地域貢献にもつながっていると思います。

物ではなく「安全と安心」を売る

物を売っているのではなく、安全と安心を売っています。

目に見えないものだし、亡くなって受け取るものなのですぐ手に入るものではないにも関わらず、90%ぐらいの人が生命保険に入っています。

売れているショップは「保険を売らない」

「家族の為の最善策を一緒に考えよう」という思いで、悩み事や困り事も聞きながら話している営業マンは良いと思います。

中には、悩み事に関して保険の話ばかり関連付けてくる方がいます。

そういった「売りつけてやる」という思いは、お客様は必ず感じるでしょう。

我々も保険ショップをやってる時には、スタッフのロールプレイング検定をします。

ロープレの中で、保険が売れない人の理由が明確に見えてきます。

やはり売れない人は、目の前に数字だけが浮かんで、思いやりが抜けている場合が多いです。

保険ショップを選ぶ際は話を聞いてくれて、「この人に任せよう」と思える方と出会えるのが一番なので、ご自身の感性でショップを探していただいた方が良いと思います。

保険が売れないならパンフレットを一切無くしてみる

たとえば保険が売れないショップを観察していると、面白いことにお客様は店舗の前を通りたがらないです。

感覚的なものですが、売れない保険ショップに近づくと「悪い気」を感じます。

そういう時はお祓いや盛り塩をして、悪い邪気を払います。

そしてパンフレットごと一切無くして、「2週間は保険の話をせず、自分たちで何か考えなさい」ということをしています。

V字回復の事例として、パンフレットがなくなった壁面で、川柳大会をしたショップがありました。

お客様が書いた川柳を読み上げると、自然なコミュニケーションが生まれていきました。

保険を売らない期間が2週間を過ぎると、その短冊を書いた人たちが、「保険ショップだし保険を契約したい」という感じで来店していただいて、意外にも持ち直しました。

新規でショップを出店するなら地域の雰囲気を読む

某居酒屋チェーン店の会長が新規出店する際、実際に土地の気を感じて決めていたという話を聞きました。それは本当だなと思います。

私も保険ショップを出店する際、公共機関を使ってその土地を訪れて、町の気を感じて「これは無理かな」と思った時は出さないです。

保険代理店や保険ショップが地域で様々な活動をすることで、地域全体の気が上がると思います。

がんなどの病気に見舞われても前向きな人生を歩める

実は私も心筋梗塞とがんを経験しています。

心筋梗塞になり、救急車で運ばれた際、先生から「心筋梗塞で運ばれた人の10人中5人は死ぬ。3人は心臓に器具がつく。実質無事なのは10人中2人」と言われました。

当時を振り返ると「その2人に選ばれたのは、何かやらないといけないことがあるんだろう」という気持ちでした。

私と同じような境遇の方がいるのであれば「何のために生かされたか」を考えて、その使命をこなすことで、人生を前に進められると思います。

咽頭がんの手術をした時には、有名な病院だったので全国から咽頭がんの患者が集まっていました。みんな喉を切っているので、声が出ないです。

声が出始めると、夜中に叫ぶ人が多かったです。

結局、退院してもなかなか職場復帰できず、「なんで自分だけこんな目に遭うんだ」と家庭内暴力に走るような人も多いです。

私は10時間の手術で摘出をして、35日ほど入院して退院しましたが、以外にも病院の中でも楽しいことがあるので、ポジティブシンキングを心がけるしかないと思います。

生かされたと思えば使命感から前向きな人生を歩める

私は生かされたことへの使命感を持って、「家族のために生かされたのなら、家族のために頑張る」と思いました。

主宰している団体を通して、「全国の保険代理店のためにこんなことをしたい」ということを実現しようと思って頑張っています。

それがないと前に進めないと思います。

生かされたからには、役割が残っていると思えば、「なんで自分だけこんな目に遭うんだ」というような発想にはならないと感じます。

この記事を読んで、大病を患っている人が一人でも前向きなマインドになればいいなと思います。

保険業界に興味がある方は未経験でもチャレンジしてほしい

最近は保険業界も人材不足になっています。

保険会社自体は、お客さんに会って保険を販売しているわけではないので、DX化を進めて

縮小していったほうがメリットは大きいと思います。

しかし、お客さんに接する保険の募集人は、人材が必要ですが足りていません。

医療系に流れがちな社会貢献をしたい、人の役に立ちたいという思いは、保険業界にも必要なのでぜひ参入してほしいです。

今、銀行に預けてもインフラで価値が下がっているので、そういう意味では保険も一つの金融商品なのでそういうのもうまく使っていただいて、保険の人からお金周りのことについて教えてもらえる機会にもなると思います。その上でぜひ保険業界に来てほしいです。

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