【Social Healthcare Design株式会社社長】ウェルビーイングの全貌と経営における重要性

健幸指標(well-being度)を見える化するアプリ「Happiness Book」や、人材育成としてのウェルビーイング研修、企業コンサルティングを提供する、Social Healthcare Design株式会社の亀ヶ谷正信様にお話を伺いました。

まだあまり知られていないウェルビーイングの定義や、その感じ方、メンタル不調への対処方法、そして今後の経営で重要になる従業員のウェルビーイングについて解説します。

Social Healthcare Design株式会社
代表取締役 CEO 
亀ヶ谷 正信さん

横浜市を中心にドラッグストア80店以上を展開するカメガヤグループの店舗開発部長として累計44店舗以上の出店、30億円以上の新規営業利益創出に貢献。その間、未病領域の重要性を認識し、約2年間未病領域、Well-Beingの研究に没頭し、2018年1月Social Healthcare Design株式会社を設立。グロービス経営大学院MBA取得。株式会社カメガヤ取締役。

ウェルビーイングの定義について

私が考えるウェルビーイングは、WHOが定めている健康の定義をベースにしています。WHOでは健康(ヘルス)を「肉体的にも精神的にも、そして社会的にも全てが完全に満たされた状態」と定義しています。このうちのどれか1つでも欠けたらダメですよと但し書きまでされています。普段あまり使わない「社会的」という言葉は、人間関係そのものを意味します。

日本語の「健康」とは異なる概念

私たちは「肉体的・精神的・社会的」を分かりやすく「ココロ・カラダ・キズナ」と表現しています。特に「キズナ」という言葉は、人間関係全般を指しており、社会的なつながりが重要であることを示しています。

ウェルビーイングを日本語に翻訳すると「幸福」や「安寧」という言葉になります。日本語の「健康」とは少し意味が違い、どちらかというと「幸福」に近い概念です。

日本語の健康は、心身ともに健常な様を指し、一人の人のココロとカラダにマイナスがなければ健康という概念です。人間関係であるキズナの要素であったり、どれだけ満たされているのかといった概念は含まれていません。したがって、日本語の健康とウェルビーイングは大きく違うのです。

「未病」と向き合うために:ココロ・カラダ・キズナのバランスを取る

病気ではないけれど完全に健康でもない状態、いわゆる「未病」について考えるとき、キャリア形成との関連性も見えてきます。例えば、体調が思わしくない人や、常に不快な状態にある人は、働く意欲も低くなりがちです。このような未病状態の人々に対して、私たちはココロ・カラダ・キズナのバランスを取ることが重要だと伝えています。

定期的な観測で自分の状態を把握

未病状態を正しく認識し、改善へ導くためには、定期的な自己観察が必須になります。未病の状態とは常に変化し続けているからです。

私たちは、ココロ・カラダ・キズナの状態を測定する「Happiness Book 」というアプリを開発し、定期的な測定によって自分の状態を客観的に把握できるようにしています。また、誰でも無料で利用できる「健幸度&性格傾向診断」も提供しています。診断結果には解説書や解説動画がついているので、ぜひ、自分の状態を確認するために活用してください。

まずはカラダを動かす

未病状態の人が低いウェルビーイング度にあり、ココロやキズナに課題を感じている場合、統計的に見ると実は「カラダの健康」がウェルビーイング度に最も大きな影響を与えていることがわかっています。そのため私たちは、極力外に出てカラダを動かすことがウェルビーイングの向上に効果的であるとアドバイスしています。 たとえば、朝日を浴びて軽く運動することは脳を活性化し、鬱症状などの改善に役立つ事が知られています。

ココロを満たすために重要な「認知の歪み」の把握

ココロを満たすためには、認知の歪みを理解することが重要です。たとえば、LINEのメッセージが既読になっているのに返信がない場合、「無視された」と感じるかもしれません。しかし、別の人であるならば「忙しいのかな」とか、「何か悪いことしちゃったかな」とか、「事故でもあったのかな」など様々な意味づけがあり得ます。このように、同じ事実に対する受け取り方は人それぞれ異なります。この認知の歪みに気づくことが重要であり、そのためには学びや鍛錬が必要です。

「情動」と「二次感情」を捉える

次に、自分の感情を理解することが大切です。感情には「情動」と「二次感情」があります。情動は、脳の外からの刺激に対し自動的に反応として起こるもので、自分では制御できません。一方、二次感情とは、過去を思い出したり将来を想像するという思考のプロセスから引き起こされるものをいいます。

たとえば、過去の出来事を思い出して「やっぱりあの時のことが許せない」と感じる場合、これは二次感情です。この二次感情は、思い出したり考えたりしなければ発生しません。

普段私たちはこの情動と二次感情がごっちゃになったものを、私の本心を表す感情だと思っているのですが、大切なのは純粋な情動を知ることにあるのです。

「今この瞬間」に意識を向ける

悩みや後悔は、将来の不安や過去の後悔に由来することが多いので、「今この瞬間」に集中することでこれらの悩みを軽減できます。この集中力を高めるためには、マインドフルネスや瞑想が有効です。

マインドフルネスとは、意識を自分の内側へ向け、「今この瞬間」に集中する練習であり、これを続けることで自分の情動をより正確に捉えられるようになります。その結果、自分が本当に望んでいることをクリアに知ることができ、キャリア形成においてもポジティブな行動を取ることができます。

外部環境を変えることも必要

さらに、外部環境を変えることも必要です。たとえば、学校でいじめにあっている場合、環境を変えることでココロの健康を保つことができます。内側を変えるプロセスと外側を変えるプロセスをバランスよく取り入れることが重要です。

3つのキズナをバランスよく保つ

キズナは大きく3つに分けて考えています。

1つは自分のアイデンティティを保つためのココロの結びつきの大きい存在、たとえば親やパートナーといった近しい人間関係(1次のキズナ)です。
2つめは友人・知人・親族などの中間的な距離感の人間関係(2次のキズナ)たち。
3つめは社会とのつながりで、例えば仕事上の役割や機能的な人間関係(3次のキズナ)をいいます。

社会的つながりや自分の役割が満たされることで、安心感が得られます。2つ以上のキズナが満たされないと、不安が増し、ココロの安定が保てなくなります。ですから、お金を目的にキズナを犠牲にする考え方は、ウェルビーイングに至れる考え方ではありません。お金や時間がなくても、相手の目を見て明るく挨拶するだけでも、キズナの健康には有効です。切り捨てるのではなく、様々なキズナをバランスよく保つことが重要です。

自分を客観視する手段として有効な自己分析ツール

MBTIなどパーソナリティ分析は広く使われており、他者との比較や自分自身を客観視するための道具として有効です。我々も脳科学に基づいた独自パーソナリティ分析を行なっており、グループ分析にも活用しています。5人から8人のグループで分析結果を表に落とし込み、性格のばらつきや集中を可視化することで、チームの強み・弱みが明らかになり、チーム運営の課題を乗り越えるための協力の仕方が発見できます。

ツールよりも大切な過去の行動への意味づけ

しかし、こうした自己分析ツールなどは転職時などで有効だと思いますが、どの自己分析ツールを使うにしても、そこから何を学ぶのかが非常に重要です。自分自身の過去に意識を向ける際、事実そのものは変わりません。たとえば、仕事で失敗したことや成功したことなどです。思い通りにいかなかったという事実に意識を向け、それを失敗として意味づけしがちです。

しかし、別の視点から見ると、同じ経験でも「この経験を通じてこんなことを学んだ」とポジティブに意味づけすることもできます。事実そういう人もいますよね。これがパーソナリティという癖なのです。

同じ事実に対して異なる意味づけをすることで、転職時には「過去にこういう経験をし、これを学びました」と前向きに伝えることができます。これは、認知の歪みに気づき、それをプラスに転用することになるのですが、このような自己分析は、単なる自己分析だけでなく、コーチングの要素も含まれます。

コーチングやカウンセリングを利用した認識変容

自己分析ツールを使って自己と向き合うことは重要ですが、もう一つ重要なのは、コーチングや他者との対話です。キャリアカウンセラーなどの専門家と対話することで、自分の思い込みに気づき、それをポジティブに切り替えることができます。

「自分はダメだ」と思い込んでいる人でも、専門家との対話を通じて「実は他の人が経験できないようなことを体験し、学んできた」と認識を変えることができます。このように自己分析ツールと専門家との対話を併用することで、より効果的な自己理解と成長が期待できます。

それぞれの違いを知り、有効活用する

カウンセリングは、カウンセラーという専門家がクライアントの症状や問題を聞きながら、本質的な課題を掘り下げていくものです。コーチングと比べると、より治療的なアプローチとなります。メンタル的に非常に参っている状態では、誰かがそばに寄り添い、サポートすることが重要ですので、このような場合にはカウンセリングが適しています。

一方で、コーチングは、基本的に質問という手法を用いて、あなたの意識の盲点や認知の歪みに気づかせてくれるものです。このアプローチは、「答えはあなたの中にあります」というスタンスで行われます。ある程度の自己理解や精神的な安定があり、さらに成長を目指したい場合にはコーチングが有効です。状況や目的に応じてカウンセリングとコーチングを使い分けることが大切です。

病を患ったら、自分を許すこと

ココロ・カラダ・キズナいずれにおいても病を患いそうだと気づいたら、まずは自分を責めずに、休息を大切にしてください。私は「病人としての役割に専念する」という言葉が好きです。多くの人は病気になっても、自分を責めたり、「ごめんなさい」と謝ったりしながら、家事や仕事を続けようとします。でも、それは違います。ダメな時はダメなんだと素直に認めて、自分を許し、他者のためにも自分自身でできること、つまり全力で休息し、回復に努めることが大切です。

完全な休息を取ることの重要性

たとえば、病院で「絶対安静」と言われるように、面会謝絶の状態を作ることがあります。脳は非常にエネルギーを使うので、スマホを見たり、他の人と話したりするだけでも大きな負担になります。完全に休むことで、新陳代謝や免疫機能が働き、病気の治りが早くなります。病気になった時は100%治すことに集中してください。

カウンセリング文化が浸透している海外

メンタルヘルスに関する問題は、特に働いているとき、自分でも認めたくないと感じることが多いかもしれません。でも、勇気を持って専門家に相談することが大切です。海外では優秀なマネージャーが定期的に心療内科や精神科のトレーナーとカウンセリングを受けることがプロとしてのたしなみとされています。日本でも、自己認知の歪みを他者に見てもらうことが重要です。

日本人は、自分1人ですべてを解決しようとする傾向がありますが、自分の認知の歪みは自分では気づけないことが多いです。友達や家族、カウンセラーなど、他者と対話する機会を作ることが重要です。これが、メンタルヘルスの問題に対するハードルを下げる一歩になります。

これからの経営に欠かせない従業員のウェルビーイング

私たちは、ウェルビーイングの測定と特にキズナの健康向上のための研修を行っています。今までの経済重視の企業経営では、今後、人口減少や労働人口の減少により、人材の確保が難しくなる事例が多く出てきています。

これからの経営に求められるのは、業績を上げることだけでなく、従業員の幸せも重要な軸として考えることです。そのため、ウェルビーイングを測定し、見える化することが必要です。これができなければ、経営自体のPDCAサイクルを回すことが難しくなるからです。この点について、必要性を感じている企業がありましたら、ぜひお声掛けください。私たちがお役に立てると思います。

業績と従業員幸福を両立させるコンサルティングサービス

我々は、アプリだけではなく、コンサルティングも行っています。企業の経営は非常に幅広く、個々人の能力開発だけでは不十分です。たとえば、戦略が間違っていたり、社内の人事評価制度が不適切だったりすると、どんなに優秀な人が集まっても成果は出ません。

また、働く人の外部環境の整備も重要です。社内の人事評価制度が全くマッチしていなかったり、ミッションやビジョンが個人のやりたいことと違っていたりすると、不整合が生じます。この整合性が取れていないと、従業員のやる気の持続性が担保できません。これからの時代、経営においては従業員の幸福と業績の両方を追求することが求められます。我々のサービスがその一助となれば幸いです。

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