【NPO法人ICDS深谷理事長】キャリア支援と未来への向き合い方

深谷理事長はキャリアコンサルタントという言葉がまだ浸透していなかった頃から、現在に至るまで「キャリアコンサルタントの意義」を考え続けていています。今回のインタビューでは、求職者とコンサルタントの両方を支援する仕組みや、法人独自のユニークなリーダー選択制度について伺いました。

深谷潤一さん

NPO法人ICDS
理事長
深谷潤一さん

ICDSは、若年層のキャリア形成をサポートしているNPO法人です。このほかにも、キャリアコンサルタントの資格運営の一環としてキャリアコンサルタント更新講習や、キャリアコンサルタントの普及活動を実施。より多く、そしてよりスキルの高いコンサルタントを送り出せる環境を整えています。

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キャリア支援のきっかけとなった「キャリアの彷徨い」とは

原点は「進路選択の失敗」

私が支援に関わるようになったのは、自身の「キャリアの彷徨い」がきっかけです。

中学の進路選択時に、結果として高校進学を経て国立高専に進学したものの、最終的には中退という結果になりました。

この経験を振り返ったときに、「もし適切なアドバイスを受けていれば、もっと違った道を歩んでいたかもしれない」と強く感じています。

その後、塾講師をしていたときに新聞記事で『キャリア形成促進助成金』の存在を知り、キャリアコンサルタントという職業に興味を持ちました。

当時はまだ『キャリアコンサルタント』という言葉すら珍しく、その意義や具体的な役割についてはほとんど理解していませんでした。

しかし、調べるうちにこの職業が『人々の進路選択を支援する』だと分かり、深い魅力を感じ、心が動かされました。

もし私が若い頃、近くにキャリアコンサルタントがいたら、異なる未来が待っていたのではないか、という思いが私をこの分野に導きました。

ICDSは若年者のキャリア形成支援をミッションにキャリアコンサルタントの実践の場を提供する

若年層のキャリア形成支援こそが日本を救う

キャリアコンサルタントの職業が成立した当初、その主な役割は中高年のリストラ対策でした。

しかし、若い世代のキャリア支援こそ、より大きな社会的意義を持つと確信しています。

多くの若者は、キャリア選択において圧倒的に情報が不足しているのが現実です。

私たちキャリアコンサルタントは、彼らが自分の未来を自ら切り開けるよう、適切で正確な情報を提供し、意思決定を支援する環境を作る責任があります。

このサポートこそが、私が目指すキャリア支援の核となる部分です。

資格の更新支援を実践

資格更新の目的は、キャリアコンサルタントとしての実践力を向上させ、その資質を磨くことです。

そのため、私たちは実践的なスキルを提供することに力を注いでいます。

一方で、資格取得や更新にかかる費用の問題は依然として大きな課題です。

試験料や登録費用はもちろん、地方に住む方々は会場への交通費や宿泊費もかかります。

さらに、更新時には講習費用が必要となり、これらの費用が受験者にとって大きな負担となっています。

私たちは、このような経済的負担を軽減するため、費用対効果の高い講習を提供し、受講者が現場で即戦力となるスキルを身につけられるよう設計しています。

実践的なケーススタディを多く取り入れ、受講者が主体的に学べるプログラムを提供しているのも特徴ですね。

資格取得はあくまでスタート。実践力強化のサポートは惜しまない

取得の門戸が広がったことで生まれた課題

キャリアコンサルタントが国家資格として認定されたことにより、受験資格が広がり、社会人経験がない若年層や大学生でも資格を取得できるようになりました。

しかし、資格取得者がすべて実際にキャリアコンサルタントとして活躍しているわけではありません。

資格を取得しても、実践力がなければ現場で通用しないという声が多く聞かれます。

実際のキャリア支援の現場では、理論だけではなく、実務経験を積むことが不可欠です。

資格取得後も、私たちは受講者が実践力を高められるよう、サポートし続けています。

資格はスタートラインに過ぎず、それをどう活かすかが重要です。

革新的なリーダー選択制度

私たちの法人では、部下が自らリーダーを選ぶ制度を導入しています。

少し強い言葉になりますが、私がサラリーマン時代に経験した『無能な上司の下で働く不幸』を踏まえた取り組みです。

この制度では、リーダーの手当は部下の人数に基づいて決まります。

そのため、リーダーは選ばれるために常に努力し続けなければなりません。

もし選ばれなかった場合、リーダー自身がその理由を自ら考え、改善していくことが求められます。

教えるのは簡単ですが、自分で主体的に考えて行動することを大切にしていますね。

この制度を通じて、組織内に自然な競争が生まれ、全体のパフォーマンスが向上しています。

『なぜこんな上司の下で働かなければならないのか』という疑問から生まれたこの仕組みは、組織運営において新しい視点をもたらしてくれたと考えています。

人生において大切にしている一冊は?

自由な思考の大切さを教えてくれた『父から息子へ13通の手紙』

私のキャリアにおいて最も影響を与えた一冊は、キングスレイ・ウォードの『父から息子へ13通の手紙』です。

特に心に残るのは、『ビジネスでは、飼い慣らされたカモではなく、野生のカモが必要だ』という言葉です。

この言葉は、既存の枠組みにとらわれず、新たな発想を生み出すことの大切さを教えてくれ

ました。

私はこの考え方を仕事やキャリア形成に活かしており、今もなおこの本が私の思考の土台となっています。

主体的なキャリア形成のすすめ

仮説を立てて実行する力

これからの社会では、個々の人が自らのキャリアを設計し、自分の使命を見つけ、それを実現する力が求められます。

答えを誰かに教えてもらうのではなく、自分で仮説を立て、試行錯誤を繰り返しながら進むことが重要です。

創業塾やコンサルタントに依存するのではなく、自分で課題を見つけ、解決する力を身につける。

それこそが、本当に成功するために必要な要素だと考えています。

キャリア支援の未来

社会がますます多様化する中で、キャリア支援はその流れに合わせて進化しなければなりません。

私たちは、すべての人が自分の特性や強みを理解し、それを最大限に活かせるような支援を続けていきます。

これからも、若い世代を中心に、キャリアに悩むすべての人々が自分の力で未来を切り拓けるよう、私たちはサポートを惜しまないつもりです。

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