【HK人事労務コンサルティングオフィス田中代表】テレワーク時代の危機管理・労務管理とは

今回は、企業危機管理と労務管理のスペシャリストとして活躍する田中直才代表にインタビューを行いました。

田中代表は、長年の企業勤務経験、特に武田薬品での労働組合専従役員やコンプライアンス担当としての経験を活かし、独立後、企業向けの研修や労務管理に関するコンサルティングを提供しています。

本インタビューでは、田中代表のキャリアの転機、企業における危機管理の重要性、テレワーク時代の労務管理の課題といった、多岐にわたるテーマについて伺いました。

田中直才さん

HK人事労務コンサルティングオフィス
代表
田中直才さん

田中代表は武田薬品工業に新卒で入社後、MR(医薬情報担当者)として9年間阪大病院を担当。その後、14年間労働組合専従役員を務めました。会社業務に復帰後は従業員に対するコンプライアンス教育に従事し、2019年に退職。現在は企業向けに、テレワーク導入や雇用調整助成金等のコンサルティング、労働組合役員向け研修、コンプライアンス関連コンサルティング等を実施。「人事労務面における不安解消」「危機管理の充実」を理念に掲げ活動し、顧問先から高い評価を得ています。

気になる内容をタップ

転職のきっかけ

社会保険労務士の資格を取得したのは、企業危機管理の専門家として独立するにあたり、信用を得るために、国家資格が必要と考えたからです。

社会保険労務士としての業務にも従事していますが、現在の主たる業務である企業危機管理については、長年勤めていた企業での経験にあります。

特に武田薬品での労働組合専従役員としての14年間と、コンプライアンス担当としての経験は、現在の活動の基盤となっています。

これらの経験があったからこそ、自信をもって会社からの独立というキャリアの転機を迎えることができました。

製薬会社の使命と従業員の安全

労働組合の事務責任者だった時に東日本大震災が発生し、福島県郡山市の営業所(原発から60キロほどの距離)にいた組合員をいかに守るかという命題に直面しました。

会社と協力しながら、製薬会社としての使命を果たしつつ、従業員の安全を確保するという、非常に難しい状況でした。

従業員からは「こんな危険な場所にとどまらせないで、すぐに避難させてくれ」という要望がありましたが、医療関係者や薬の配送を担う医薬品卸売業者は誰も逃げていませんでした。

製薬会社だけが避難するというわけにはいかない状況で、従業員の安心安全を担保しながら、製薬会社としての使命を果たすためにはどのような危機管理が必要なのかを学びました。

この経験が、企業危機管理の専門家としての視点を養うきっかけとなりました。

コンプライアンス強化の難しさ

9年間MRとして阪大病院を担当後、労働組合役員を経て武田薬品のコンプライアンス担当となりました。

当時、同社は厚労省から業務改善命令を受け、コンプライアンス強化が急務でした。

そのため、他社で許容されていた行為が武田薬品では禁止されたため、現場の営業担当者は「なぜ武田だけが」との葛藤があり、コンプライアンスと営業成績向上の板挟みに苦しんでいました。

この経験から、コンプライアンス強化には従業員の納得感が不可欠だと痛感し、規則で縛るだけでなく「従業員が自ら考え、規則を守りながら活動できる環境づくりこそ重要」だと学びました。

これがキャリアにおける大きな転機となり、コンプライアンスと従業員の自主性の両立という課題に取り組む原点となりました。

テレワーク時代の労務管理

テレワークが抱える課題

昨今、テレワークが普及していますが、テレワークは働く場所が会社から自宅に変わっただけで、会社に出社時と同様に働く、つまり業務に専念する義務があることを理解する必要があります。

厚生労働省の広報などを見ると、テレワークを導入することで、業務時間中に育児や介護をしても良いといの誤解を生む可能性がありますが、本来のテレワークは、通勤時間を短縮するための手段であり、業務時間は集中して働くべきです。

そうでないと、通常勤務している従業員から不満が出る可能性があります。

テレワークを導入する際には、育児や介護をしている従業員にも、業務時間中は集中して働く義務があることを明確に伝える必要があります。

働き方改革と生産性向上

無駄な業務を洗い出す

働き方改革を進めるにあたっては、まず社内の無駄な業務を洗い出すことが重要です。

重複している業務や無駄な会議などが必ずあるはずです。各個人に1週間、何をしているのかを時間単位で書き出してもらうことで、無駄な時間や重複した作業が見えてきます。

業務の棚卸しを行い、無駄な業務を省いていくことで効率化を図ることができます。

また、従業員一人ひとりの能力を向上させることも重要です。

同じ時間でできる業務量を増やすことで、生産性を向上させられます。

生産性を上げるためには、従業員のモチベーションを高めるマネジメントが不可欠です。

会社として単にスキルアップを求めても、全員が同じ方向を向くわけではありません。

各個人に合った方法でモチベーションを高め、スキルアップを促すことが重要です。

部下のモチベーションを引き出す力

マネジメントで最も重要なのは、部下一人ひとりに不満を持たせることなく、積極的にモチベーションを持って業務に取り組んでもらうことです。

組織は人の集まりなので、性格やスキルが異なる個人に対して、それぞれに合った方法でモチベーションを高め、スキルを伸長させるためどのようなサポートができるのかが重要です。

マネジメント力は、経験や研修で身につく部分もありますが、先天的な能力も関係していると思います。

人とのコミュニケーションが好きではない、自分の業務のみに没頭したいといったタイプは、マネジメント職には向いていない可能性があります。

そのような場合は、部下を持たせずに専門職として活躍してもらうなどの適材適所な配置が必要です。

キャリアに影響を与えた2冊の本

キャリアに大きな影響を与えたのは、長谷川慶太郎氏の『対局を読む』と井沢元彦氏の『逆説の日本史』です。

『対局を読む』は、明快な論理で物事を論理的に考える重要性を教えてくれました。

「論理的」の意味が初めて腑に落ちた一冊であり、以降、長谷川氏の著作を通して論理の大切さを学びました。

一方、『逆説の日本史』は、常識を覆す視点を与えてくれました。

例えば、織田信長の比叡山焼き討ちは、単なる残虐行為ではないと考えられます。すなわち、比叡山をはじめとする当時の宗教勢力は、戦国大名のごとく武装しており、非武装の宗教家を一方的に攻撃したのではありません。このことが理解できると、信長の行為は、宗教勢力の武装解除の意味合いがあり、信長後の日本において宗教戦争を根絶したとも解釈できます。

このように、物事の二面性に気づかせてくれたのが井沢氏の著書でした。

これらの本を通して、物事を論理的に考え、多角的な視点を持つことの重要性を学びました。

研修とトラブル対応のスペシャリストとして

企業危機管理とコンプライアンスの専門家として、武田薬品での社員教育経験(3年間)と、独立後の5年間で数多くの研修を実施してきた実績があります。

研修内容や進め方、内容のブラッシュアップなど、研修に関することであれば、相手の要望を丁寧にヒアリングした上で、満足いただける研修を提供できます。

また、労働組合の専従役員経験があるため、労働組合の行動原理を理解しています。

そのため、企業側の立場から、労働組合への対応策などをアドバイスできます。

組合員が5000人を超える労組の幹部として長らく活動していたため、様々なトラブル対応を経験しており、会社におけるトラブル対応に関するアドバイスも可能です。

これらの経験は、他の社会保険労務士にはない強みだと考えています。

対応する企業の規模は特に限定しておらず、従業員3000人規模の企業から20人規模の企業まで、様々な規模の企業と顧問契約を結んでいます。

研修についても、人数や規模に合わせて内容をアレンジできますので、企業の危機管理に関することでお悩み方はぜひご相談ください。

田中直才さん
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
気になる内容をタップ