【中央大学教授】常識に新しい何かを付け加えられるような活動を

中央大学名誉教授、京都大学博士(経済学)である田中洋先生にお話いただきました。

電通にて21年間マーケティングの実務を経験後、法政大学経営学部教授やコロンビア大学客員研究員などを務め大学で研究を行いつつ、日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任されている田中先生は、近年、マーケティングやブランド戦略を中心に研究されています。

2017年には『ブランド戦略論』を執筆し、日本マーケティング学会マーケティング本大賞、日本広告学会賞を受賞されるほど、ブランド領域に大きな影響を与えました。

今回は、マーケティングやブランドに精通した田中先生のこれまでの研究者人生と、これからのマーケティング職について、お話を伺いました。

中央大学 名誉教授
田中洋先生

1951年生まれ。中央大学名誉教授。
京都大学博士(経済学)、株式会社電通で21年実務を経験後、法政大学経営学部教授、コロンビア大学客員研究員、中央大学大学院戦略経営研究科教授などを経て、2022年より現職。
日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長などを歴任。主著に『ブランド戦略論』(2017年、有斐閣)など。
日本マーケティング学会マーケティング本大賞、日本広告学会賞などを受賞。

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研究のきっかけになった海外研修

田中洋先生
参照:広告朝日

私は電通で21年間、マーケティングの実務を中心に携わりました。電通に勤めている間に、海外研修へ行く機会があり、ジャーナリズムの修士課程を経験し、研究というものについて学びました。この経験はその後、日本広告学会などで研究を発表したり、著作を発表したりすることにつながることになります。

これらの研究や著作発表をきっかけに、大学からお声がかかり、研究者へ転職することを決めました。現在も、実務を経験したマーケティングやブランドに関する研究を行っています。

マーケティングの根幹であるブランドの存在

田中洋先生
参照:MarkeZine

私は、主にマーケティング、広告、消費者行動論、ブランドの研究に取り組んでいます。ブランドにはさまざまなものがありますが、世の中にブランドが浸透すると、社会の中でブランドが共有化され、独立した存在になります。このことから、ブランドは社会的な側面があると言え、社会やマーケティングにおいて、ブランドはとても重要であると言えるでしょう。

そのため、近年、私はブランドの研究に力を入れています。そもそもブランドがどのようなものであるか、ブランドの定義から、ブランドの歴史、ブランド戦略の構造などを総合的に考えて、研究しています。

ブランド戦略論と社内誌の事例執筆

私はこれまで、日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長などを務め、マーケティング分野において、さまざまなプロジェクトや課題に取り組んできました。

その中でも、ブランドに関する広い範囲の問題に答えるためのブランド論の体系を作ろうとした『ブランド戦略論』を執筆したことは、強く印象に残っています。ブランドに関する理論から戦略、事例などを含めて、包括的にまとめることができました。しかし、『ブランド戦略論』を書き終えた今でも、継続的にブランドについて考え続ける必要があると考えています。

また、20年にわたり毎月、NTT東日本の社内誌で「マーケティング成功事例」を執筆したことも、私の中で大きな成果であると言えます。社内誌に執筆する上で、200社以上の起業に訪問して事例を執筆しました。マーケティングの実践例を吸収するために、必要な訪問でしたし、数多くの事例に触れることができた貴重な機会だったと感じています。

これからのマーケティングとキャリア形成

今後のマーケティング職は、考えられてきた職務内容から大きく変わることが予測されます。例えば、職務を果たす上で、プログラミングやデジタルに関する知識が必要になるでしょう。

一方で、これまでの伝統的なマーケティング的思考は、今後も有効になるとも考えられます。これからもマーケティング職を遂行する上で、デジタルの基礎知識は必要になりますが、デジタルの知識は調べたらすぐにわかることが多く、陳腐化するとも考えられます。

そのため、根本的なマーケティングの考え方を大切にしましょう。より多くのマーケティング事例に触れつつ、ノウハウを吸収して、マーケティングの引出しを増やし続けることをおすすめします。

『ブランド戦略論』の続編

まずは、先ほども話した『ブランド戦略論』の続編を執筆したいです。また、これまでに執筆してきた著作の中から、選抜をして刊行したいとも思っています。私は、これまでに常識として知られていることに関して、新しく何かを付け加えることを重要視しており、これらの執筆物もそれに寄与するものと考えています。

今後はできる限り、マーケティングやブランドの問題について自分なりの回答を残すことで、自分ができることをやりきりたいと考えています。

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