【株式会社プリサージュ佐野社長】CAで培った「自分へのホスピタリティ」の大切さ

佐野昭子さん

株式会社プリサージュ
代表
佐野昭子さん

日本航空で約15年間、客室乗務員として国際線に乗務。
JALアカデミー研修講師、トラベルジャーナル旅行専門学校講師を経て2002年に人材育成研修会社「株式会社プリサージュ」を設立。
ホスピタリティ向上をベースとした「カリスマ人間力」の研修プログラムを体系化。

研修や講演を通して、企業で働く人々にホスピタリティの大切さを伝えている、株式会社プリサージュの佐野昭子さん。

意外なことに、ホスピタリティとはまず自分を大切にすることだと佐野さんは言います。自分を大切にすることが、周りも幸せにしていくのだそう。自分を大切にするとはどういうことでしょうか。佐野さんにお話を聞いてみました。

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キャビンアテンダントから講師の道へ

子どもの頃からキャビンアテンダントになりたいと思っていました。小学校の卒業文集にも「日本航空のスチュワーデスになる」と書いたんです。昔から目標が具体的でしたね。生まれは東京ですが、育ちは札幌で、「こんな田舎からキャビンアテンダントになるなんて無理に決まっている」と周囲の人たちは言いました。でも、私には根拠のない自信があったんです。1回目の受験は落ちてしまいましたが、諦めずに2度目の受験で合格し、日本航空のキャビンアテンダントになりました。

JALでは12年間勤務しました。結婚して二人目の子どもを授かった時に、航空業界からは一度退きました。しばらくの間は働いていなかったのですが、ある日、たまたまJALアカデミーの接遇マナー講師の募集を見つけて試しに応募してみたら受かって、そこから教育の道に足を踏み入れることになりました。

JALアカデミーや旅行専門学校など、いろいろなところで教育をするようになりました。そうしていて「また飛行機に乗って飛びたいなぁ」と思っていた矢先にちょうどJALの子会社のJALwayで契約社員募集があり、またJALwaysのCAとして、2年半乗務しました。その時は研修の仕事も並行してやっておりました。そして自分の人生を鑑みたとき、研修一筋でやっていきたいと決意し、今の道を選びました。「会社の社長になってみたい」という第二の目標もありましたので。そして個人事業主として2002年に創業し、2018年に株式会社プリサージュとして法人化を果たしました。

株式会社プリサージュは「ホスピタリティ」の大切さを伝えています

佐野昭子さん

私は「ホスピタリティ」を何よりも大事にしており、研修や講演でもよくお話しています。でも皆さん、結構誤解されていて、ホスピタリティは「相手に対するもの」だと思っている方が多いです。でも実はそうではなく、まず「自分にかけてあげないといけないもの」なんですね。

自分を大切にしないと、相手のことも大切にできないです。それはなぜか。自分が幸せだと、自然と優しい気持ちになり、心に余裕が生まれます。すると周りのことが見えるようになってきます。相手が何を考え、どうすれば喜んでくれるのかが、自然と分かるようになってくるのです。

そしてここで気をつけなければならないことは「自分と相手はちがう人間である」ということです。自分がされて嬉しいことは相手も嬉しいことだとは限らないのです。

もし相手が考えていること、感じることが自分と一緒と思い込んで、何かをしたとしましょう。でもそれは相手が望むことではなかったとしたら、相手にとっては「大きなお世話」「お節介」となってしまうからです。

ではどうすればいいのか?次でお話します。

自分の心をよく見つめる

よく、「目配り、気配り、心配り」という言葉をよく耳にします。が、最初に配るのは、「心配り」

自分の心を見ることから始めます。自分は相手のことを大切に思っているかどうかです。

ここでは「盲点」に気を付けないといけません。

人間の脳は、自分が見たいもの,聞きたいものしか目や耳に入ってきません。

自分の興味のないものは「盲点」となって気づかないのです。ですから相手を大切に思わなければ気づかないことが多くて相手にホスピタリティがかけられないのです。

そして次に「目配り」です。相手の表情や態度を見ます。聴覚や触覚などの五感も使って、相手のことを「観る」ことも必要です。相手の声の調子を耳で聞く、気持ちの温度を肌で感じる、そういったことで気づけることがあります。

それができると「気配り」に入ります。これは「看る」という漢字を使います。「看」の文字を分解すると「手」と「目」になりますね。目で見て気が付いたら、そっと手を差しのべるということです。これが出来るようになると「気が利く人」と言われるようになります。この流れで「ホスピタリティ」が出来上がります。

ホスピタリティと感性の関係性

またホスピタリティに長ける人になるためには、感性を磨くことが大切です。素敵だな、きれいだななどといった感動を自分の心の内から能動的に感じられる人は、感性が豊かです。感性は、子どもの頃はちゃんと持っているんですが、大人になると鈍くなってしまいます。当たり前の知識が出てしまうからです。でも、今からでも意識することで感性は磨けます。その方法は、「毎日最低3回は感動すること」です。このような感動体験を続けていると、自分は幸せだと感じられるようになってきます。

自分が幸せになると、その幸せは周りにも広がっていきます。自分の周りがキラキラしてきます。ホスピタリティはWinWinの関係を生んでいき、そのWinWinがどんどん繋がっていくんです。私はこれを、ブリリアントWinと呼んでいます。私は、日本全国にホスピタリティを広めていきたいと思っています。

感動することは大げさなことではない

でも「1日に3回も感動できません」という人が時々います。でも、感動できるようなことって、世の中のちょっとしたことにもたくさんあふれているんです。例えば自動販売機で売っているペットボトル飲料。これを私たちが購入するまでに、どれだけの人が関わってくれていると思いますか?商品をサプライしてくれる人、トラックで輸送してくれる人、工場で製造してくれる人、ラベルやボトルをデザインしてくれている人。ペットボトル飲料一つをとっても、こんなにも多くの人が関わってくれているんです。ほかにも、私たちは水道をひねればすぐに水を飲むことができますが、飲み水がなくて困っている国だってあります。私たちはいろいろなことを、当たり前だと思って感謝することを忘れてしまっているんです。

自分の気持ち、ちゃんと伝えていますか?

でも、現代を生きる私たちは仕事や生活でいっぱいいっぱいになっているので、感動や感謝をする余裕もなくなってしまっているんですね。だからギスギスしている、仕事においても、自分の気持ちを抑えて、我慢するのが当たり前のようになっています。我慢を重ねすぎると、いつかは心が爆発してしまいます。そうなってしまう前に、相手に自分の気持ちを伝えていくことが大切です。

伝え上手になりましょう

気持ちの伝え方が上手にできなくて、部下への指導を失敗してしまう上司の方もいます。例えば、何度も同じミスをする部下がいるとしましょう。上司としては、何度も注意しているのにと、怒りが抑えられずに、つい怒鳴ってしまいたくなります。しかし、人は怒りの波動をぶつけられても、心には響かないんです。むしろ言い訳を考え始めてしまいます。これではいつまでたっても部下は変わらないどころか、下手をすると会社が嫌になって辞めてしまうかもしれません。

そこでホスピタリティです。たとえ怒りを感じたときであっても、まずは一旦、自分の心に目を向けて観るんです。自分が怒りを感じている原因を探ってみるのですね。「どうして自分は部下にこんなに怒っているのだろう?」「何度も同じミスを繰り返しているから」「部下のミスを止めることができなかった自分も悔しい」「部下は本当はできるやつなのに、残念だ」「このままでは、周りにも認めてもらえないから出世させてやれない」などと、自分の気持ちに目を向けていくと、気持ちがクールダウンしてくるんです。そして、今自分の気持ちに問いかけ出てきた言葉を、部下に同じように伝えてみるのです。そうすると、ただ頭ごなしに叱るより、部下は真剣に話を聞いてくれるはずです。上司の自分も、我慢せずに言いたいことが言えるので、大爆発が起きなくなり、人間関係もうまくいくのです。

まずは自分のことを好きになってみて

佐野昭子さん

角度を変えて見ると、ホスピタリティの真髄は、自己肯定感にも繋がっています。

人は本能的に、好きなものを大切にするはずです。それは自分という「個」に対しても同じです。

もし自分を好きでないという意識が強いと、自分を大切にできない、自分を認められない、自分を信じられないとなってしまいます。そうなると文字通り「自信」がなくなります。それは自己肯定感が低い状態で、残念なことに、何かに挑戦する意思もなくなってしまうのです。

ある時、学校の先生100人へ向けての講演会で「自分のことが好きな人は手を挙げてください」と質問したことがありました。驚いたことに、10人程度しか手を挙げなかったのです。もちろん手を挙げることが恥ずかしい方もいらっしゃったと思います。でも、子供の教育に携わる先生には、100人全員堂々と手を挙げていただきたかったですね。先生が自分を好きでいて、自己肯定感を高く持って余裕を持ち、子ども一人ひとりのいいところを見つけてあげられることが大切だと思うからです。

これは会社も同じです。会社ではいろいろな人が働いていて、全員のことは好きになれないかもしれません。でもよーく考えると嫌いな人にでもいいところはあります。それを五感を使って見つけることができれば、嫌いだとしてもでも感謝の気持ちを持って接することはできますよね。自己肯定感が高ければ、余裕を持てるはずなので、その人がいてくれて働いてくれているから自分の仕事もはかどっていると気づき、その人の存在を認めてあげられる人になれるはずです。

ホスピタリティは奥が深いものです。そして一人ひとりにホスピタリティの世界観が存在します。
「相手を慮ってさりげなく相手のwantsを叶えてあげる」これこそが究極のホスピタリティです。

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