今回は株式会社キャリア・ブレスユー代表取締役の東正志さんに、事業の展開方法や地方における現代の働き方についてお伺いしました。

キャリアブレスユー
代表取締役
東正志さん
さまざまな職業を経て人材派遣会社に就職した後、キャリアコンサルタントの資格を取得。
経歴を活かして人材サービス会社「キャリア・ブレスユー」を設立。若者・女性・シニア等を支援する様々な団体に所属し雇用を創出している。
- キャリア形成支援や教育訓練、職場環境の整備が大切
- 飛び込み型の営業せず、ご相談いただいた企業との交流を密にしている
- なるべく若いときにどんどんチャレンジすることこそが大事
「優良派遣事業者」認定の舞台裏と都市圏にない価値

ー和歌山県内で初めて優良派遣事業者に認定された背景として、どのような取り組みや工夫があったのでしょうか?
そもそも優良派遣事業者認定制度とは、法令を遵守しているだけでなく、派遣社員と派遣先の双方に安心できるサービス基準を満たしている派遣事業者であることが認定の条件になります。
安心できるサービス基準の具体例として、以下が挙げられます。
- 派遣社員のキャリア形成支援
- より良い労働環境の確保
- 派遣先でのトラブル予防
国が定めた厳格な基準を満たした派遣会社に与えられる認定制度です。
労働条件の明示やコンプライアンス体制など、81の審査項目をクリアする必要があります。
派遣社員は、同じ職場で働き続ける期間が原則3年と定められています。
3年経過するまでに、以下のいずれかを選択する必要があります。
- 派遣先に直雇用されることを目指す
- キャリア・ブレスユーの無期雇用社員になり同じ職場で就労する
- キャリアチェンジをして他の職場に勤める
そのため、キャリア形成支援や教育訓練、職場環境の整備が大切です。
認定企業には派遣スタッフのスキルアップや、キャリアアップのサポート体制が求められます。
キャリア・ブレスユーのコーディネーターは、ほとんどがキャリアコンサルタント(国家資格)の有資格者なので安心して頂けます。
全国には約4万の人材派遣会社がありますが、優良派遣事業者に認定されているのは、わずか170社程度(0.4%未満)しかありません。
その中で、和歌山県に本社を置く企業として初めて認定されました。

ー和歌山を拠点に事業を展開される中で、都市圏と比べた地域で働くことや事業を営むことの価値や可能性について教えてください。
近年はリモートワークが一般化し、エンジニア職などで「住む場所に縛られない自由な働き方」も可能になってきています。
山や川の豊かな自然に恵まれており、食べ物もおいしく、住みやすい環境なので快適に仕事ができるかと。
地元に住みながら都会と同等の待遇で働けるようになったら良いなと感じています。
地方からキャリアを切り拓く!人材流出を防ぐための新しい育成モデル

ー地方在住者がキャリアアップで直面しやすい課題と、乗り越えるために効果的な視点や工夫は何でしょうか?
課題は人材が流出してしまうことですね。
大学が少なく、学ぶ場所が少ない。だからこそ、県外の大学へ進学しそのまま都市部で就職するケースが多いのでしょう。
ITエンジニアを目指している子を雇って、育成して現場に行けるようにする取り組みをしています。
具体的には、プログラミング教室をやったり、社内のエンジニアが教えたり。
勉強している間は、社内の仕事を手伝ってもらっています。
成功例としてYouTube「ラビナビチャンネル」に登場した和ちゃんは、この環境の中でスキルを伸ばし、現場で活躍を始めています。
学びはじめの頃から動画を投稿していたため、もちろんうまくいかない可能性もありましたが、本人の頑張りもあって成果が出ています。
育成はうまくいかないこともありますが、頑張る人には応えていきたいですね。
ーデジタル化やDXが進む時代に、地方で働く人や組織が最低限備えておくべきスキルや考え方は何だと考えていますか?
タイムパフォーマンスを上げるため、AIのツールは使っておくべきですね。
弊社では、どの社員も便利なAIを使って、生産性を上げる工夫をしています。
若い世代は新しいツールに慣れているので「こんなのがあるんですよ」と、教えてもらいながら色々と試すようにしています。
ー地域性を活かした人材の多様な活かし方や、ユニークなキャリア形成事例があればご紹介ください。
人と人との距離感が非常に近く、コミュニティのつながりが強いことは良い点ですね。
どちらが上・下とかはなく、対等な関係だと考えています。
人口規模も都会に比べて小さく、人材も限られているため、地域の人々はお互いのことをよく知る関係性ができています。
弊社では、飛び込み型の営業は全く行っておらず、ご相談いただいた企業との交流を密にしております。
一人ひとりが力を発揮できる環境づくりが企業成長につながる理由

ー働きやすい環境づくりは、個人のキャリア形成や企業の成長にどのような影響を与えていると感じますか?
どの企業もフルタイムで高いスキルを持つ人材を求めていますが、なかなか理想どおりの方を確保するのは、現状では難しいのではと感じています。
一人ひとりの能力は意外と変わりません。
今は、能力や環境を補う様々なツールもあり、また、その人にあった環境を整えれば充分力を発揮する事が出来ます。
弊社では、専門のコンサルタントや心理士によるカウンセリング体制を整えており、求職者や企業のヒアリングをしっかり行っています。
人材ビジネスの分野ではサポート出来ない方々に対しても、弊社は行政から受託し連携している就労支援も行っています。
公的な事業では非営利でも支援が出来るので、生活困窮者やひとり親家庭、引きこもり支援など、単独で取り組むのが難しい分野への支援を実現できており、ありがたいと感じています。
ー女性がキャリアを伸ばす上で直面しやすい課題と、企業・個人それぞれはどう対策して乗り越えるべきでしょうか?
女性のキャリア形成の課題として「環境の変化」があげられます。
結婚や出産、子育て、介護などによってキャリアが止まってしまうからです。
例えば、子育て中に子どもが急に熱を出した場合、休みの連絡を入れなければなりません。
特にインフルエンザのような病気では、上の子が罹患したあとに下の子、さらに自分も…と負のスパイラルになり、1ヶ月休むことになることもあるでしょう。
負担が大きいため、弊社では気を遣わずに済むように、チャットツールでスタンプのみで対応する仕組みにしています。
昔だったらビジネスマナー的にはよろしく無いと言われたやり方かもしれませんが・・・
また、急な休みが必要になっても在宅で仕事ができるようにしています。
預け先が無い時は子どもを連れての出勤もOKにしています。子どもにとっても、親がどのように働いているのかを見る機会を作れるメリットもあります。
会社に来ることにも抵抗がないので正月明けに新年の挨拶にくる子もいて、その時はお年玉を渡したりもしています。最近は親が働いている弊社に入社してくる子も出てきました。
さらに、女性活躍を推進するために、元社員がNPO法人ホッピングを立ち上げた事例もあります。
ー求職者が自分に合った仕事を見極めるためのコツと、企業が適材適所で人材を活かすための工夫、それぞれに共通して大切にすべきことは何でしょうか?
「お見合い」と一緒で、いくら表面的に良いことを話してマッチングしても、実際に働き始めてみるとギャップがあったら続きにくいです。
実際に面接する際は面接に同行して、求職者が伝えきれない良い点を代わりに伝えたり、疑問点を伺ったりして、双方の理解を深めるようにしています。
リスキリング(再スキル習得)を促して、時代の変化に対応できる柔軟性を持ってもらうことも大切です。
若いうちの挑戦が未来をつくる!キャリア形成の新常識

ーキャリアに悩む個人と人材不足に悩む管理職・経営者に向けて、明日から踏み出せる一歩としてシンプルなアドバイスをお願いします。
今は、新卒で入社してずっと同じ会社で勤め続けるというよりも、ファーストキャリアからステップアップする時代です。
年配になればなるほどキャリアチェンジが難しくなってくるため、なるべく若いときにどんどんチャレンジすることこそが大事だと考えています。