2018年、当時所属していた「株式会社ダイアナ」の社内ベンチャー制度を利用して、「株式会社Dサクセッションパートナーズ」を設立した高畑公志さんにお話を伺いました。
高畑様は大学卒業後、製造業の営業や外資系の営業支援会社などでキャリアを積み「商売を丸ごと回したい」という積年の想いから起業されました。
今回は、人材領域の事業を手掛ける高畑様に「AI時代における人の価値」について、お話しいただきました。

株式会社Dサクセッションパートナーズ
代表取締役社長
高畑 公志さん
広島県出身。事業継承促進、起業家支援の促進を目的として、株式会社ダイアナのファミリー企業として、2018年1月に株式会社Dサクセッションパートナーズを創業。また同年に、MBAを取得。自社で業態を開発し、美と健康を展開する企業として運営。インドのITエンジニア派遣や、シンデレラ転職、また「美来創造会議」といった様々なレイヤーとの交流イベントも開催。
AIは分析は得意だが【人】にしかできないこともある
AIに代わるところはマッチングや過去の転職者のデータなど、どういう風に転職を繰り返してキャリアアップしているのかというデータが蓄積されていると思います。
マッチングや求職というところは、確実にAIで個人の適正を見ていくと思います。
ひと昔前だと、学歴、職歴ぐらいだったと思いますが、今では自己分析ツールで自己の、より解像度の高い状態マッチングが可能になりました。
大手企業で工場勤務だった人が、コンサル会社に行くというのは外れ値だと思います。
傾向から言うと、元々工場勤務だった方は、新しい転職先の候補として工業系の現場の求人をAIでは導き出してくると思います。
しかし、個々の考えや中長期的なキャリアプラン、家庭環境の変化などの複雑な要素についてはAIがすべてを判断することは難しいです。
求職者が心の中で「本当にやりたいことだったのか」というところまでは導き出せないと思うので、理想のキャリアから逆算した求人の提案は、人がやるべきな領域だと、現時点では思います。
重要な選択における最後の後押しは人だけが成せる技
先日、結婚相談会社から「婚活アドバイザーの採用を支援してくれないか」という話をいただきました。
大手の結婚相談会社はかなり自動化していて、マッチングの仕組みにAIを導入していると思います。
なぜ全国で婚活アドバイザーを募集してるかというと、昔でいう仲人の「あなた、この人と結婚しなさいよ」という最後の一押しがおそらく人間しかできないからだと思います。
「この領域に行ってみようかな」「チャレンジしてみようかな」となった時に、AIが分析した傾向のデータのみだと一歩を踏み出せないと思います。
反対に、そのデータに基づいて、本当に信頼できる人から後押しされると、「チャレンジしてみようかな」という風になると思います。
それはアドバイザーとして絶対に必要だと思うので、そういうところはAIに代替されにくいのではないかと思います。
居心地の良い空間を提供できるのも人ならではの価値
自社でも美容室を3店舗経営しているので、美容院はおそらくAIに代替するのは難しいと感じています。
美容師さんとの会話や施術によって演出される「居心地の良さ」は、おそらくAIでは代替できないと思います。
もし今後、法律が変わってAIが美容師になったとしたら、今の技術的に考えても、注文通りには仕上げてくれると思います。
しかし、美容室ならではのコミュニケーションや心地の良い空間の提供はできません。
同様に、注文通りに仕上げるだけではなく、「この髪型・髪色が似合うと思いますよ」という提案は、AIにはできても、居心地の良さまでは再現できないと思います。
転職アドバイザーも一緒だと思うので、そこは間違いなくAIに代替されることはないと考えています。
AIで可能な領域、人がやる領域の切り分けはより進んでいくと思います。
新卒での就職は解像度を上げたほうが上手くいく
私はグループのホールディングスの人事の責任者として、新卒採用を担当していました。
美容に関連する会社のため、補正下着や化粧品、サプリメントなど、女性のプロポーション作りを支援するというところを軸としていたので、新卒の応募はほぼ女性でした。
面接の中で、「なぜ当社に応募したのですか?」と質問すると、「美容が好きだからです」という回答が返ってきます。
しかし、美容の会社に行ったからといって、美容の仕事だけできるわけではありません。
具体的な事例でいうと、日本には「人気企業ランキング」があります。
20代の方は情報量が少ない傾向のため、「自分が経験したことがある×見たことがある、知ってる会社=人気企業」と考えている方は非常に多いです。
大手旅行会社に就職したからといって、全員が全員、旅行の仕事をするわけではないと思います。
「その会社に就職して、何をしたいか」というところを落としていかないと、就職や転職後のギャップに苦しむかもしれません。
安定した企業の定義を知ることから始めよう
就職希望者から「安定した企業で働きたいです」と言われることがあります。
あくまでも個人的な意見ですが「安定する企業」は世の中にはありません。
「安定こそ衰退」といった言葉があります。世間は諸行無常で常に形は変わるものであって、成長し続けないと生き残れません。
なら何が安定なのか、という話になってきます。
たとえば財務視点で言うと、帝国データバンクで評点65点の会社から仕事の依頼をいただいたことがあります。
私も聞いたことがない会社でしたが、話を聞いていくと、労働環境、テレワーク・フレックス制度、やりがいなど、全てにおいて、帝国データバンクの評点が65点なことに納得できる優良企業でした。
それは私の中での安定だと考えます。
経営はお金がなくなったらアウトですが、ほとんどの人は「安定してる企業=テレビのCMに出てる企業」くらいの浅い知識で応募してきます。
しかし、広告に出ている有名企業だから安定していると思いきや、実際には会社の財務状況は全く安定していなかった、ということもあります。
目に見えるものだけではなくデータに基づいて企業を選ぶ
SNSで流れてくる企業はCMをたくさん打っているので、「目に入る企業=有名な企業」だという考え方が一般的だと思います。
しかし、実際にデータとして財務状況が安定している会社と、CMで見たことがある会社、どちらが安定しているでしょうか。
前者が正解ですが、そういうことを知らない方に対して、我々の転職サービスでは懇切丁寧に説明します。
そのため、結果的に希望とは全く違う職種に紹介するということもあると思います。
AIには導き出せない【外れ値】がキャリアを開く
私は元々外資系企業でマーケティングをしていました。転職するつもりはなかったのですが、ダイアナというグループに出会って、その代表と「美と健康の美容カンパニーを作っていきたい」という話で盛り上がり、「この会社面白いかも」と思い転職を決めました。
その外れ値はおそらくAIには予測できないと思います。
もしその時に私がAI転職サイトに登録していて、自分の経歴から算出されたおすすめの会社の候補に、補正下着の会社は絶対に出てこないと思います。
しかし、結果的にこの会社に入ってグループで役員も務めながら、事業会社で転職の会社を経営したりと、転職前とは全く違うキャリアになっています。
私はある程度仕事への解像度が高かったため、自分で決めましたが、そうではない人にいかにそれを教えてあげられるかだと考えます。
予想外の提案は、AIにはできないし、人がやるべきだと思います。
就職活動をするなら企業のことを徹底的に調べよう
私の知り合いの社長が経営している会社があります。
知名度もなく、全然派手な会社でもないですが、1年で60億、70億と増えるモンスター企業です。
そういう会社は世の中にたくさんあると思うので、それを教えてあげたいと考えています。
表面的な情報ではなく本質を見抜くためにリサーチする
化粧品会社は、有名女優を起用したCMや百貨店、免税店での販売に多額の費用を投じていますが、それは成分の質とは関係がありません。
上場企業の財務報告からマーケティングコストを見極めることで、本当に良い化粧品が自ずと選べると思います。
同様に転職活動においても、表面的なイメージや広告に惑わされず、実際にその会社に出向いて、ビルの電気が深夜まで点いているか、社員が挨拶するか、電話の対応などから企業の実態が知れるでしょう。
広告や求人のコピーライティングに惑わされずに、自分の目で確かめることで、本当に自分に合った企業を見つけられます。
自身で徹底的に調べられる人は転職後に結果を出せる
結婚するとき、相手について「綺麗な人だから結婚する」ではなく、その人の人となりや、お金への価値観など、色々な側面を見ると思います。
それはおそらく、仕事探しにおいても同じです。
出されている求人票から実情を見極めるのは難しいと思いますが、本気でやりたいことがあって転職を考えているなら、そこまで突き詰めた方がいいと思います。
しかし、そこまでできる人は自分で調査・実行し、考えて比較して決めるという能力があるので転職エージェントを使わずとも転職できると思います。
転職エージェントを使ったとしても、自分である程度そういったところをできる気概とスキルがあれば成功するのではないかと考えます。
これからは派遣や単発アルバイトのような働き方が一般化する
派遣や単発アルバイトのような働き方が増えていくと思います。
タイミーはじめ、単発バイトのマッチングなど高度化してることもありますので。
正社員で雇うと、教育コストや社会保険の支払いなど、見えないコストが発生します。
経営者が積極的に正社員を雇いたいかというと、そうではないでしょう。
今、国が中小企業の賃上げや労働環境の改善を謳っていますが、実際にそれらを実行するのは経営者です。給料を上げるためには、売上も上げなければなりませんが、現実問題としてかなり難しいです。
転職サイトに来る人は、自分で転職活動をすることが難しい人だと思います。
反対に、企業が正社員として雇いたいような優秀な人材は、転職活動をしなくても自然と仕事が来ると思います。
そういう人に関しては、企業側から役員や社外取締役のオファーを出すという感じになると思いますが、「日銭が稼げれば良い」という考えの方は正社員化が難しいと思います。
企業は意欲的な人材を採用したいので、高い給料を払ってでも正社員として迎え入れると思います。
個人のキャリアの考え方やコミット力、グリッド力とかある人は意外と少ないので、そこが大事なんじゃないかなと思います。
単発バイトは第一線を退いた方の職場復帰の役割が期待される
労働人口は今後減っていきますし、一線を退いた方たちの力も活用しないといけないと思います。
ライフステージの変化などをきっかけに第一線を退いた方々は、復帰を恐れている面もあると思います。
そのため、企業、国、個人が正しい方向を向いていくと、おそらく良いかたちで単発バイトもうまく機能していくかもしれません。
例えば美容室でいうと、昔は有名美容室で働いて、箔をつけてカリスマ美容師になる、というキャリアが多かったと思います。
今ではSNSで自分のスタイルを発信することで集客が可能です。
そのため、インフルエンサー美容師にお店を貸すことで売上を折半する、というビジネスも増えてきています。
今後も多様な働き方が生まれてくるでしょう。
多様な働き方に応じて事業者側も柔軟性が求められる
フリーランスでも、新規事業の立ち上げを専門家としている方や、マーケターとして企業のブランディングやPRのお手伝いをしている方がいます。
様々な働き方がある現代で、正社員だけを選択肢にする必要はないと思います。
だからこそ派遣の需要が高まっており、企業としても派遣の方を採用するリスクは少ないです。
一方で、新卒採用で本当にその企業の文化や価値観にコミットする人材を育成することも重要だと思います。
今まで日本は新卒一括採用、終身雇用という風潮でしたが、今はその流れも変わりつつあるので、派遣社員の需要は増えてくると思います。
プロ人材になるなら適切な【資格】があると有利
私は大学院でMBAに行きましたが、そのMBAが偉いとは思いません。
ただ、採用する側からすると、資格や学歴、経験もない求職者が、理想の高い雇用条件を提示してきたとしても採用したいとは思わないと思います。
中にはそういった企業もありますが、倍率が高いです。高倍率の中で誰が選ばれるかというと、学校の勉強や資格習得など、頑張った方が選ばれる傾向です。
人事の人もサラリーマンだとしたら、上司に「まだまだ経験は薄いですが、自ら資格を取ってチャレンジしようとしてる人なんです。だからこの人を通しました」と報告できることがおそらく正しいんだと思います。
つまり差別化するためには、資格を取ることがわかりやすいかと思います。
就職にはマーケットインの視点を持つと行動が変わる
企業の採用担当という視点では、プロダクトアウトとマーケットインの発想だと思います。
例えば求職者の「私は何も頑張っていないけど、良い部分を見てほしい」という考えは、おそらくプロダクトアウトの思考だと思います。
そういった人の採用率もゼロではありませんが、確率論としては低くなると思います。
しかし、ビジネスは確率をいかに上げていくかというところが重要です。
マーケットインの視点を持つと、人事は採用だけしているわけではないことが分かると思います。
面談調整、給与・査定など、人事には山ほど仕事があります。その数ある業務から採用に割ける労力はおそらく1%ほどだと思います。
そう考えると、プロダクトアウトの思考が勘違いであることが分かります。
will・can・mustの3つの軸でキャリアを考える
ツールは便利なので使えるものは使った方がいいと思います。
ただしアウトプットにはツールの結果だけでなく、自分の思想や考え方も取り入れなければ無意味です。
そこに軸として入れた方がいいと思うものが“will”、“can”、“must”です。
その3つの軸が重なった時に、本当に自分がやりたいことかどうかが見えてくると思います。
“will”は自分がやりたいと考えているものです。
“can”は年齢や体力的に考えて、それが実現できるかどうかです。
“must”は、それを実現する必然性はあるのか、社会的ニーズはあるのかです。
本当にそれはやりたいことなのか、ケイパビリティとしてできることなのか、本当に社会的必然性があるのかという3つを考えるといいと思います。
“must”の視座を上げると、伸びている市場に身を投じることも大切だと思います。
同じ労力でも、伸びている市場は社会的に求められており、社会のトレンドも見極めて考えていくと良いのではないかと思います。
成功したキャリアを歩むなら圧倒的に差別化せよ
他の候補者との差別化がしたいなら「自分が社長だったら自分を雇いたいか」を考えてみるといいと思います。
社長から見た時に「この人にはもっとお金積んでても雇いたいな」と思われる行動をしていれば、必然的に資産も上がるし経営者から好かれると思います。
人事評価は人間が介入している以上、完全に公平な評価はありません。
「この人ならなんとかしてくれるかも」「お願いしたいかも」というところに繋がれば、成功につながると思います。
会社から「こき使われろ」という話ではなく、本当に上り詰めたいのであれば、なにかあった時に依頼される状況を自分で作り出しておくのが大切です。
今後は人材紹介の他にビジネスコミュニティを展開

今は有料職業紹介の人材紹介を展開していますが、インドのオフショア開発の日本展開もスタートしています。日本でも多くの企業がエンジニアを採用したがりますが、転職市場で優秀なエンジニアの数は少ないです。
なので国外にも市場を広げ、インドからのオフショア開発を展開し始めました。人を軸に事業領域を広げていきたいと考えています。
また、HRまわりのIndeedの運用や広告の運用、派遣と併せて、20、30代を中心とした転職サポートだけでなく、ミドルクラスやハイクラス、CXOクラスのサポートも展開し始めています。
そして人事の右腕です。面談を一つ組むにしても、上司の日程調整、会議室の確保、候補者への連絡など、やることはたくさんあるので、人事回りのサポートも展開していきたいと思います。他にもビジネスコミュニティを展開していきたいです。
経営者コミュニティは多いですが、エグゼクティブやマネージャークラスのつながりを深めていって、ビジネスの解像度を上げていける仕組みを作りたいです。
求人票に書いてあることだけではなく、現場のリアルな声が聞けるコミュニティがあれば、情報交換の中で求職者の職業ミスマッチを防ぐこともできると思います。
今、沖縄のある施設と組んで、リトリートツアーや我々の主催する研修を通して、心と体をリトリートしながら、横の繋がりも深めて、ビジネスの成長に繋がる機会を作っています。
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