【日本大学教授】興味のあることを探求し続け、科学の分野において新しい発見や流れを作りたい

榛葉 繁紀先生は、現在体内で栄養素がどのように生成・代謝・制御されているのかについて体内時計の観点から研究されています。

なぜ研究者の道を目指そうと思われたのですか?10〜30代の若手が医療業界で活躍するために必要なことは?
榛葉先生ご自身のキャリアから若手のキャリアについて、榛葉先生の独自の視点からお話いただきました。

日本大学薬学部
榛葉 繁紀先生

名古屋生まれ、静岡県掛川市育ち。1991年3月に静岡県立大学大学院薬学研究科修了後、同年4月よりベイラー医科大学にてリサーチアソシエートとして従事。1995年より日本大学薬学部に勤務し、現在は教授を務めている。

担任の先生からの言葉が、研究者を目指すきっかけに

高校3年生の時に担任の先生から言われた一言がきっかけで、研究者を目指すようになりました。もともとは獣医になることを夢見ていたのですが、先生から「薬学部は大学院もセットだから、そこで研究をして新しい薬を開発する研究者になれば、目の前の1匹の動物だけでなく何万匹もの動物を助けられる」と言われ、その言葉に心を動かされました。

大学の講義で聴いた、生命維持のプロセスに感動を覚えた

私は体内時計の観点から、体内で栄養素がどのように代謝されて身体を作っていくのか、調節されているのかについて研究しています。これらの仕組みを解明できれば、糖尿病や脂質異常症、がん、アレルギーなどの病気の理解につながります。


私がこの研究をしようと思ったのは、大学の講義がきっかけです。講義では、「生命の維持にはエネルギーが必要であり、そのエネルギーは代謝によって生み出される。そして、代謝を司っているのは酵素、すなわちタンパク質であり、タンパク質はRNAの配列に従って作られる。そのRNAの配列の原本はDNA上に書かれている」という話を聞いて、DNAから生命維持のプロセスが全て一本につながっている点に感動したんです。

代謝によって作り出される物質の量は、身体にとって過不足ないように精密に制御されています。例えば、ある物質Aが過剰に生成されると、その物質Aは自身を生成するための酵素の量を減少させたり働きを弱めたりします。このような制御が非常に美しく見え、自分の手でこのような仕組みを見つけたいと思い、研究に取り組むようになりました。

キャリアのなかで、特に印象深い3つの論文

今まで携わってきた全ての仕事が印象に残っていますが、そのなかでも特に印象に残っているのが3つの論文です。

1つ目は、大学院生の時に執筆した初めての論文です。この論文も代謝に関する内容でしたが、自身が科学の進歩に少しでも貢献できたことに感動しました。

2つ目は、アメリカでの武者修行中に執筆した論文です。知識と技術の向上を目指してアメリカへ行ったため、この論文は代謝とは直接関係ないテーマでしたが、学生時代から憧れていた雑誌に論文が掲載されて自身の成長を強く感じました。

3つ目は、日本に帰国して最初に執筆した論文です。自分自身が全ての責任を負って進めてきたものが認められ、独立できたことを強く実感しました。

これまでに挙げてきた一つ一つの論文が、私にとって大切な成果です。そのなかでも、対外的には2005年に発表した「体内時計と脂肪細胞との関係」に関する論文が、私のキャリアで最も誇りに思える成果です。この論文によって、人生が変わったと言っても過言ではありません。この論文を執筆するにあたり、今後の人生がかかっていることが予想できたため、強い意志と実行力を持って成し遂げました。

若手が医療業界で成功するために

10〜30代の若手が医療業界で成功するには、何よりも自身の専門知識を深めることや英語力、コミュニケーション能力、挨拶を欠かさないことが大切だと思います。頭脳と身体のバランスを保ってハードワークをいとわない能力やビックデータを扱える能力があれば、今後有利になるかもしれません。また目の前で起こっていることに対して、当たり前と思わない能力も求められるでしょう。

キャリア形成に関しては、30歳を少し過ぎる頃まではとにかく自分の能力を高めることを優先しましょう。そのためには、若い頃の丁稚奉公が重要です。

専攻すべき分野では、データサイエンスの分野が今後さらに発展していくと思いますので、おすすめです。しかし、個人的な意見としては発展が期待できる分野を専攻するのではなく、自身でトレンドを作り出す気持ちで研究を進めてほしいと思っています。

最後まで科学的興味を突き詰めていきたい

榛葉 繁紀先生
引用:毎日新聞

仕事をする上で大切にしていることは、「見て見ぬふりはしない」「疑問は声にして確認する」「可能性を否定しない」の3点です。若い頃は「継続した努力と忍耐力」を重視していましたが、年齢を重ねた現在は「理解と我慢」を重視するようになりました。

年齢的に定年後の話になってしまうので、未来像は考えていません。そのため、今は「最後まで自分の科学的興味を突き詰めて新しい発見をしたい」「科学の新しい流れを作りたい」と考えています。

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